結論からいうと、もともと換気を前提に設計された床下換気口や小屋裏換気口を塞ぐと、建物の耐久性を低下させる可能性があります。
湿気が排出されにくくなることで、次の問題が起こりやすくなるためです。
- 木材の腐朽
- カビや異臭
- シロアリ被害
- 金物のさび
- 断熱材の湿潤・垂れ下がり
- 小屋裏や野地板の結露
- 屋根下地の劣化
ただし、基礎断熱や屋根断熱など、最初から床下・小屋裏を密閉する構法もあります。大切なのは、換気口の有無ではなく、住宅全体がどの断熱・防湿・換気方式で設計されているかです。
床下には2種類の考え方があります
1.床断熱・床下換気方式
1階の床で断熱し、床下を屋外に近い空間として扱う一般的な方式です。
基礎に設けた換気口や、基礎と土台の間に設置する基礎パッキンから外気を取り入れ、床下の湿気を排出します。
この方式で換気口を塞ぐと、床下に湿気が滞留し、土台や大引、根太などが傷む可能性があります。
住宅金融支援機構の耐久性基準でも、床下空間がある住宅では、基礎換気口または基礎パッキンなどによって一定の換気面積を確保し、地面から上がる湿気を防ぐ措置が示されています。住宅金融支援機構・木造住宅の耐久性基準
2.基礎断熱方式
基礎の立ち上がり部分などで断熱し、床下を室内に近い温熱環境として扱う方式です。
基礎断熱では、原則として床下換気口を設けず、基礎と土台の間も気密化します。ただし、単に換気口を塞ぐだけでは基礎断熱にはなりません。
必要になるのは次のような対策です。
- 基礎部分への連続した断熱
- 床下地面の防湿コンクリートや防湿シート
- 基礎天端・配管貫通部の気密処理
- 床下の空気循環
- 必要に応じた空調・除湿
- 結露計算や防露設計
- 点検・防蟻対策
国土交通省の施工資料でも、基礎断熱の場合は床下を室内側として扱い、床下換気口を設けず、基礎天端と土台の間を気密化する考え方が示されています。国土交通省・住宅の省エネルギー設計と施工
したがって、床断熱の住宅の換気口を後から塞ぐことと、正しく設計された基礎断熱はまったく別です。
基礎パッキン部分も塞いではいけません
比較的新しい住宅では、四角い床下換気口ではなく、基礎と土台の間に基礎パッキンを設置し、建物の外周全体から換気する方法があります。
外から見ると細い隙間なので、次のようなもので誤って塞がれることがあります。
- 外構工事のモルタル
- ウッドデッキ
- 植木鉢や収納箱
- 落ち葉や土
- 防虫目的のテープやスポンジ
- 後付けの断熱材
基礎パッキンの隙間も床下換気経路です。防虫や寒さ対策のために、自己判断で塞がないようにしましょう。
小屋裏換気は何のために必要ですか?
天井断熱の住宅では、小屋裏は屋外に近い空間として扱われます。軒裏、妻壁、棟などの換気口を使って、湿気や熱を排出します。
小屋裏換気を塞ぐと、冬は室内から入った水蒸気が冷たい野地板で結露し、夏は屋根からの熱がこもる可能性があります。
特に注意したいのは次の部分です。
- 軒裏換気口
- 妻換気口
- 棟換気
- 屋根裏の通気層
- 下屋部分の小屋裏換気
- 断熱材と屋根の間の通気経路
住宅金融支援機構の基準でも、小屋裏換気口の位置と有効換気面積を計算し、図面に明記することが求められています。住宅金融支援機構・耐久性基準のチェックポイント
屋根断熱なら小屋裏換気は不要ですか?
屋根面で断熱・気密する「屋根断熱」では、小屋裏を室内側の空間として扱う設計があります。この場合、従来型の小屋裏換気口を設けないこともあります。
ただし、次の条件が必要です。
- 屋根面の断熱材が連続している
- 室内側の気密・防湿層が適切
- 屋根下地の通気層が確保されている、または防露設計がされている
- 小屋裏の温湿度を管理できる
- 換気ダクトの結露対策がされている
- 屋根全体の構成が計算・設計されている
天井断熱の住宅で小屋裏換気口だけを塞いでも、屋根断熱へ変更したことにはなりません。
「寒いから塞ぐ」のは問題ですか?
床下換気口から冷気が入り、床が寒く感じることがあります。しかし、換気口を塞ぐのではなく、次の対策を検討します。
- 床断熱材の不足や脱落を直す
- 配管貫通部の隙間を気密処理する
- 床断熱材を追加する
- 断熱材と床材の間に隙間をつくらない
- 気流止めを適切に施工する
- 必要なら専門設計によって基礎断熱へ改修する
床下の寒さと、床下換気は分けて考える必要があります。室内へ冷気が入る原因は、床下換気口ではなく、床や壁内部の気密施工にある場合があります。
「虫や雨が入るから塞ぐ」のは問題ですか?
完全に塞ぐのではなく、換気量を維持した対策を行います。
虫への対策
- 専用の防虫網を使用する
- 基礎パッキンの専用防虫部材を使う
- 目詰まりや破損を定期的に確認する
- 床下の木材や段ボールを撤去する
網目の細かすぎる防虫ネットは、ほこりで詰まり、換気量を低下させる可能性があります。
雨への対策
- 換気口カバーや水切りを見直す
- 外構の地盤勾配を建物から外側へ取る
- 雨どい・排水経路を改善する
- 台風時の吹込み位置を確認する
- 基礎周辺に水がたまらないようにする
台風時に雨が入るからと常時塞いでしまうのではなく、建築士や施工会社に侵入経路を調査してもらいましょう。
宮崎では「換気すれば必ず乾く」とも限りません
宮崎県では、梅雨から夏にかけて外気の湿度が非常に高くなります。そのため、床下換気口を増やせば必ず乾燥するとは限りません。
暖かく湿った外気が、温度の低い床下へ入ると、相対湿度が上がる場合があります。
宮崎で床下の湿気が多い場合は、換気口の数だけでなく、次の原因を確認します。
- 地面からの水蒸気
- 基礎周辺の排水不良
- 雨漏り・給排水管の漏水
- 浴室まわりからの水分
- 換気経路の偏り
- 断熱材の垂れ下がり
- エアコン冷気の床下流入
- シロアリ被害
必要に応じて、防湿シート、防湿コンクリート、排水改善、床下除湿などを組み合わせます。
床下除湿機を置くだけで根本原因を解決できるとは限らないため、まず水分の侵入経路を調査してください。
換気口が塞がれていないか確認するポイント
床下
- 換気口に土や落ち葉が詰まっていないか
- 基礎パッキンがモルタルで塞がれていないか
- 植木鉢や物置が換気経路をふさいでいないか
- 床下にカビ臭がないか
- 木材や断熱材が湿っていないか
- 金物にさびがないか
- シロアリの蟻道がないか
小屋裏
- 軒裏・妻・棟の換気口が塞がれていないか
- 断熱材が軒先の通気経路をふさいでいないか
- 野地板に水滴や黒ずみがないか
- 釘や金物がさびていないか
- 雨漏り跡がないか
- カビ臭や異常な暑さがないか
シニアの方が床下へ入ったり、天井裏へ上がったりするのは危険です。点検は建築士、住宅診断士、施工会社などへ依頼しましょう。
換気口を塞ぐ前に確認すること
- 現在は床断熱か基礎断熱か
- 天井断熱か屋根断熱か
- 新築時の設計図書に換気方式が記載されているか
- 防湿コンクリート・防湿シートがあるか
- 床下・小屋裏の温湿度はどうなっているか
- 木材の含水状態や腐朽・シロアリ被害はないか
- 換気口を塞ぐ代わりの防湿・空調措置が設計されているか
「高気密住宅にしたい」「断熱性能を上げたい」という理由だけで、既存の換気口を発泡ウレタンやモルタルで塞ぐのは避けてください。
まとめ
床断熱・天井断熱の住宅では、床下換気口や小屋裏換気口は、木材を湿気から守る重要な役割を持っています。自己判断で塞ぐと、腐朽、カビ、シロアリ、結露などによって建物の耐久性が低下する可能性があります。
一方、基礎断熱や屋根断熱では、換気口を設けない設計もあります。ただし、それは断熱、防湿、気密、空調、点検方法まで一体で計画された場合です。
宮崎のような高温多湿地域では、単に換気口を開ける・閉めるのではなく、地面からの湿気、雨水、断熱方式、空気の流れを含めて判断することが大切です。








