結論からいうと、液状化リスクが高い地域でも家を建てられる場合はあります。ただし、通常の不同沈下対策だけでは、地震時の液状化まで十分に抑えられないことがあります。
対策は、次の3つに分けて考えます。
- 建物本体の傾き・沈下を抑える
- 敷地や外構の沈下・噴砂に備える
- 給排水管や電気などのライフラインを守る
ハザードマップで「液状化可能性が高い」と表示されていても、それは広域的な予測です。最終判断には、敷地ごとの詳しい地盤調査が必要です。
液状化とは?
地下水位が高く、緩く堆積した砂質地盤が地震で強く揺れると、地盤が一時的に液体のような状態になることがあります。
液状化が起きると、次のような被害が考えられます。
- 住宅が沈下・傾斜する
- 地面から砂や水が噴き出す
- 玄関・ポーチ・駐車場に段差ができる
- 給排水管が破損する
- マンホールや浄化槽が浮き上がる
- 道路や敷地が沈下する
- 地中の杭と周辺地盤に段差が生じる
建物が杭で支えられて無事でも、敷地や配管が沈下して生活できなくなる可能性があります。
最初に敷地ごとの追加調査を行う
一般的な戸建住宅では、スクリューウエイト貫入試験が使われます。ただし、この試験だけでは、液状化判定に必要な土質や地下水位を十分に確認できない場合があります。
液状化リスクが高い敷地では、次の追加調査を検討します。
- ボーリング調査
- 標準貫入試験
- 土質サンプリング
- 粒度試験
- 地下水位の確認
- 液状化判定
- 想定沈下量の計算
- 周辺のボーリングデータ調査
- 過去の地形・土地利用履歴の確認
国土交通省も、液状化を判断するにはハザードマップだけでなく、ボーリングデータ、旧地図、空中写真、過去の被害履歴などを確認することが重要としています。国土交通省・宅地液状化の調査に必要な情報
建築場所を見直すことが最も確実な場合もある
まだ土地を購入していない場合や、同じ敷地内で建物位置を変更できる場合は、対策工事だけでなく、建築場所そのものを見直します。
- 液状化可能性が低い土地へ変更する
- 同じ敷地内の地盤が比較的良い場所へ建てる
- 旧河川・埋立て・盛土部分を避ける
- 津波・洪水浸水想定区域も同時に確認する
- 擁壁や水路から距離を取る
- 建物をコンパクトで軽い形状にする
液状化、津波、洪水の危険性が重なる敷地では、地盤改良へ多額の費用をかけるより、土地や建物位置を変更するほうが安全で合理的な場合があります。
建物を支える主な対策
1.鋼管杭などで支持層へ伝える
液状化する可能性のある地層より下に、十分な支持力を持つ地層がある場合、鋼管杭などで建物の荷重を伝える方法があります。
メリット
- 建物本体の沈下や傾きを抑えやすい
- 深い軟弱地盤に対応できる場合がある
- セメント系改良が難しい土質でも検討できる
注意点
- 敷地や外構の液状化を防ぐものではない
- 杭周辺の地盤が沈下すると玄関や配管に段差ができる
- 杭の長さや支持層の傾斜で費用が変わる
- 液状化時に杭へかかる力の検討が必要
- 基礎と杭の接続設計が重要
単に「支持層まで杭を入れる」だけでなく、地盤が液状化した際に杭が受ける水平力や、周辺地盤の沈下量まで検討してもらいましょう。
2.セメント系改良で地盤を固める
液状化する地盤をセメント系固化材と混ぜ、地盤自体を固くする方法です。
- 表層を面状に固める
- 柱状改良体を配置する
- 改良体を格子状・壁状に配置する
- 建物下を盤状に改良する
住宅の荷重を支える柱状改良と、液状化そのものを抑える改良では、配置や設計目的が異なります。
「柱状改良をしたから液状化対策も完了」とは限りません。設計書に、液状化対策としての効果が検討されているか確認してください。
3.砕石などで地盤を締め固める
砕石や砂を地中へ施工し、地盤を締め固めたり、水圧を逃がしたりする方法があります。
注意点
- 適用できる土質や地下水条件が限られる
- 工法ごとに効果と設計方法が異なる
- 狭い住宅地では施工機械に制約がある
- 隣地への影響を確認する必要がある
工法名や材料のイメージだけで選ばず、想定地震に対してどの程度の沈下抑制効果があるか確認しましょう。
4.地下水位を下げる
地下水を排水し、地下水位を下げることで液状化しにくくする方法があります。
ただし、個人の戸建住宅1区画だけで行うのは難しく、周辺地盤の沈下や維持管理も必要です。一般には、道路や複数宅地を含む地区単位で検討される対策です。
基礎を強くすれば液状化対策になりますか?
ベタ基礎や剛性の高い基礎は、建物の一部分だけが沈む不同沈下を抑えるために役立つことがあります。
しかし、ベタ基礎だけで液状化を防ぐことはできません。
液状化時には、基礎全体が沈んだり傾いたりする可能性があります。基礎設計は、地盤改良や杭と一体で検討します。
また、耐震等級3も建物の構造性能を示す基準であり、地盤の液状化を防ぐものではありません。
建物を軽く、単純な形にする
同じ地盤条件でも、建物の重さや形状によって沈下の影響が変わります。
- 木造住宅にする
- 建物をコンパクトにする
- 凹凸の少ない四角い形状にする
- 重い屋根材を避ける
- 建物重量を左右均等にする
- 大きな張り出しや偏った間取りを避ける
- 平屋の場合も基礎面積と荷重を計算する
平屋は軽い傾向がありますが、基礎面積が広くなるため、必ず液状化に有利とは限りません。建物荷重と地盤条件を計算して判断します。
配管・設備の液状化対策
液状化地域では、建物本体だけでなく配管対策が重要です。
- 給排水管に変位を吸収できる継手を採用
- 建物と地面の接続部分に余裕を持たせる
- 床下で点検・交換できる配管にする
- 排水管の勾配変化を想定する
- 配管を基礎へ適切に支持する
- 浄化槽・雨水タンクの浮上対策
- 給湯器・室外機を安定した架台へ固定
- 地震後に元栓を閉められる配置
- 断水に備えた飲料水・生活用水の備蓄
杭で建物を支えても、地面側に直接埋設された配管が沈めば、建物との接続部で破損する可能性があります。
玄関・ポーチ・外構の段差対策
液状化時には、建物本体よりも、玄関ポーチ、テラス、犬走り、駐車場などが沈下することがあります。
シニア住宅では、わずかな段差でも転倒や車いす移動の障害になります。
- 玄関ポーチと建物基礎の支持方法を確認する
- スロープを一体施工するか、補修しやすい構造にする
- 給排水管を点検できる位置へ設ける
- 外構を将来高さ調整できる仕上げにする
- 沈下後に持ち上げやすい舗装材を選ぶ
- 玄関以外の避難経路も確保する
外構まで全面的に液状化対策をすると高額になるため、命・生活継続・補修のしやすさで優先順位を付けます。
地盤保証と地震保険を確認する
一般的な地盤保証は、通常使用時の不同沈下を対象としていても、地震や液状化による沈下は対象外の場合があります。
契約前に次の点を確認してください。
- 地震による沈下は保証対象か
- 液状化は保証対象か
- 建物だけでなく配管・外構も対象か
- 免責金額
- 保証期間
- 修復工事の範囲
- 調査・設計・施工会社の責任分担
地震保険では、地震による液状化で建物に一定以上の傾斜・沈下などが生じた場合、損害認定の対象になる可能性があります。ただし、地盤、外構、門、塀だけの損害は対象外となることがあります。契約する保険会社へ事前に確認しましょう。
宮崎県で確認したい情報
宮崎県では、南海トラフ巨大地震や日向灘地震に関する液状化可能性を「ひなたGIS」で確認できます。
- 南海トラフ巨大地震等の液状化可能性
- 日向灘地震の液状化可能性
- 震度分布
- 津波浸水想定
- 洪水・内水リスク
- 土砂災害警戒区域
宮崎県・南海トラフ巨大地震等の被害想定
宮崎県・日向灘地震の被害想定
宮崎市の沿岸部や河川周辺では、液状化だけでなく津波・洪水リスクが重なる可能性があります。地盤改良を行っても津波や浸水は防げないため、避難場所と避難経路を優先して確認してください。
なお、宮崎県では液状化予測の更新作業も進められています。契約時点の最新データを確認しましょう。
対策費はどのくらいですか?
液状化対策は、一般的な不同沈下対策より高額になる傾向があります。
戸建住宅では、調査・設計・施工を含めて、150万~500万円以上かかる場合があります。深い支持層、広い建物、敷地全体の改良、配管・外構対策まで行うと、さらに増える可能性があります。
見積りは次のように分けてもらいましょう。
- 通常の建物支持に必要な地盤改良費
- 液状化対策として追加する費用
- 杭・基礎の追加費
- 配管・設備対策費
- 外構・玄関ポーチ対策費
- 追加調査・液状化判定費
- 残土処分・試験費
「地盤改良費一式」では、何に対する工事か判断できません。
住宅会社に確認する質問
- ハザードマップ以外に個別の液状化判定をしましたか
- 地下水位と液状化する地層は何mですか
- 想定される沈下量はどの程度ですか
- 提案工法は建物支持と液状化対策のどちらですか
- 建物周辺の地盤沈下はどうなりますか
- 給排水管の破損対策はありますか
- 玄関・外構との段差対策はありますか
- 地震・液状化は地盤保証の対象ですか
- 対策後に残るリスクは何ですか
- 土地変更・配置変更との費用比較をしましたか
「この工法なら絶対に液状化しない」という説明には注意が必要です。対策後も残るリスクを説明できる会社を選びましょう。
まとめ
液状化リスクの高い地域では、通常の地盤改良だけでなく、敷地ごとのボーリング調査や液状化判定を行い、次の対策を組み合わせます。
- 杭や地盤改良による建物の沈下対策
- 剛性の高い基礎
- 軽くバランスのよい建物
- 配管・浄化槽などの変位・浮上対策
- 玄関・外構の段差対策
- 地震保険と保証内容の確認
- 津波・洪水を含めた避難計画
シニアの建替えでは、対策費を追加しても老後資金を十分残せるかを確認し、リスクが非常に高い場合は、建築場所を変更する選択肢も含めて判断することが大切です。








