結論からいうと、24時間換気システムは、通常は高齢者の身体に負担をかける設備ではありません。むしろ、化学物質、二酸化炭素、におい、湿気などを排出し、室内の空気環境を保つために必要です。
ただし、設備の選び方や配置が悪いと、次のことが生活上の負担になります。
- 寝室で換気音が気になる
- 冬に冷たい給気が体へ当たる
- フィルター清掃に脚立が必要
- 給気口を閉じて換気不足になる
- 梅雨時に外の湿気が入りやすい
シニア住宅では、換気性能だけでなく、静音性・清掃のしやすさ・給気位置まで設計することが大切です。
24時間換気は止めてもよいですか?
原則として、停止せず連続運転します。
建築基準法では、シックハウス対策として、一般的な住宅に1時間当たり0.5回以上、つまり約2時間で室内空気が1回入れ替わる能力を持つ機械換気設備の設置が求められています。国土交通省・住宅等における換気
24時間換気を止めると、次のリスクが高まります。
- 建材や家具から発生する化学物質がこもる
- 二酸化炭素濃度が上がる
- においや生活臭が残る
- 湿気がたまり、結露やカビが発生する
- 押入れや収納内部が湿りやすくなる
台風などで外気の侵入を一時的に抑える必要がある場合、火災など外気に危険がある場合、設備の点検・清掃時などを除き、基本的には連続運転します。
第1種換気と第3種換気の違い
住宅では、主に第1種換気と第3種換気が採用されます。
| 項目 | 第1種換気 | 第3種換気 |
|---|---|---|
| 給気 | 機械 | 自然給気口 |
| 排気 | 機械 | 機械 |
| 熱交換 | 採用できる | 原則なし |
| 室温への影響 | 抑えやすい | 給気口付近が暑い・寒い場合がある |
| 電気代 | 比較的高い | 比較的安い |
| 構造 | やや複雑 | 比較的シンプル |
| 清掃 | 本体・フィルター・給排気口 | 給気口・排気ファン |
| シニアとの相性 | 温度差を重視する場合に有利 | 管理の簡単さを重視する場合に有利 |
第1種熱交換換気は、排出する空気の熱を利用して外気を室温に近づけてから取り込むため、給気の冷たさや暑さを抑えやすい方式です。
ただし、熱交換換気もエアコンではありません。外気を完全に室温と同じにする設備ではなく、夏の湿気や冬の乾燥をすべて解決できるわけでもありません。
運転音はどのくらいですか?
住宅用の24時間換気は、弱運転・常時運転時で、一般的に20~30dB程度を目安にした低騒音製品が多くあります。
| 音の大きさ | 感覚的な目安 |
|---|---|
| 20dB前後 | 木の葉の触れ合う音、非常に静か |
| 30dB前後 | 静かな郊外の深夜、ささやき声より小さい程度 |
| 40dB前後 | 静かな室内、図書館程度 |
製品によっては、寝室向けの弱運転で約19.5dBを示すものもあります。三菱電機・24時間換気対応製品の静音性能
ただし、カタログの騒音値が小さくても、実際の住宅では次の理由で音が大きく感じられることがあります。
- 換気本体が寝室の天井裏にある
- 吹出口から風切り音がする
- 必要風量に対してダクトが細い
- ダクトが急角度で曲がっている
- 本体の振動が天井へ伝わる
- フィルターが詰まり、ファンの負荷が増える
- 夜間の静かな環境で低い音が気になる
音に敏感な方は、寝室で25dB以下を一つの目安に、実際の運転音をモデルハウスや完成住宅で確認すると安心です。
寝室で音を抑える方法
- 換気本体を寝室の真上に設置しない
- 本体と寝室の間に収納や廊下を挟む
- 防振吊り金具を使用する
- 消音ダクトや消音部材を設ける
- ダクト径と風量に余裕を持たせる
- ベッドの枕元に給排気口を配置しない
- 常時運転時に弱風量で必要換気量を確保する
- 完成時に風量と運転音を測定する
スイッチで弱運転にできても、必要換気量を下回ってしまっては意味がありません。設計段階から弱運転時の風量を確認しましょう。
電気代はどのくらいですか?
24時間換気本体の電気代は、方式やファンの数、風量によって異なります。
電気料金を31円/kWhとして24時間運転した場合の単純計算は次のとおりです。
| 消費電力 | 月間電気代の目安 | 年間電気代の目安 |
|---|---|---|
| 5W | 約110円 | 約1,360円 |
| 10W | 約230円 | 約2,720円 |
| 20W | 約450円 | 約5,430円 |
| 40W | 約910円 | 約1万860円 |
| 60W | 約1,360円 | 約1万6,300円 |
※31円/kWhは資源エネルギー庁が省エネ効果の金額換算に使用する目安単価です。実際の料金は、電力会社、契約、燃料費調整額などで変わります。資源エネルギー庁・省エネの金額換算係数
方式別の大まかな目安は次のようになります。
- 第3種換気:月100~500円程度
- 第1種熱交換換気:月500~1,500円程度
- 大風量・高機能型:月1,500円を超える場合もある
これは換気扇本体だけの概算です。第1種熱交換換気はファンの電気代が高くても、排気する熱を回収することで冷暖房負荷を抑えられる場合があります。そのため、換気本体の電気代だけでなく、エアコンを含めた住宅全体の消費電力で比較する必要があります。
高齢者が負担に感じやすい点
1.冷たい風や暑い風
第3種換気では、外気が給気口から直接入ります。冬に給気口の近くへベッドや椅子を置くと、冷たい風を感じることがあります。
- 給気口をベッドの枕元に設けない
- カーテンの裏に隠さない
- エアコンの空気と混ざりやすい位置に設ける
- 必要に応じて熱交換換気を採用する
「寒いから」という理由で給気口を閉じると、換気経路が崩れる可能性があります。
2.フィルター清掃
換気設備は、定期的にフィルターや給排気口を清掃します。頻度は製品や周辺環境によりますが、1~3か月ごとの点検、半年~1年ごとの交換などが一般的です。
道路沿い、畑の近く、花粉や虫が多い場所では、汚れやすくなることがあります。
シニア住宅では、次の設計が適しています。
- 脚立を使わず手が届く高さ
- 1か所でまとめて交換できる
- フィルター交換時期が表示される
- 水洗いできる部品が少ない
- 家族や業者へ清掃を依頼できる
- 交換フィルターを継続購入できる
3.乾燥や湿気
24時間換気は室内の湿気も排出するため、冬は乾燥を感じることがあります。一方、宮崎の梅雨時は、高温多湿な外気を取り込むため、換気だけでは除湿できません。
- 温湿度計を設置する
- 夏はエアコンや除湿機を併用する
- 冬は過度な加湿を避ける
- 室内干しの湿気を管理する
- 浴室・調理時は局所換気も使用する
24時間換気は、エアコンや除湿機の代わりではありません。
宮崎で選ぶ際のポイント
宮崎県では、高温多湿、台風、花粉、黄砂、沿岸部の塩分なども考慮します。
- 梅雨時の湿気処理
- フィルターの防虫・花粉性能
- 台風時の風圧や逆流音
- 給排気口への雨水侵入対策
- 海岸近くでは屋外部品の耐塩害性能
- 停電復旧後に自動で運転再開するか
- 地元で修理・部品交換ができるか
高性能フィルターは有効ですが、細かすぎるフィルターを付けると風量が低下することがあります。設計時からフィルターの圧力損失を考慮する必要があります。
シニア住宅には第1種と第3種のどちらがよい?
第1種熱交換換気が向いているケース
- 断熱等級6以上を計画している
- 冬の冷たい給気を抑えたい
- 全館空調や連続空調を採用する
- 花粉対策を重視する
- 定期的なフィルター管理ができる
- 初期費用と将来の交換費を確保できる
第3種換気が向いているケース
- 構造が単純な設備を希望する
- 初期費用と電気代を抑えたい
- 将来の修理・交換を簡単にしたい
- 給気口の位置を適切に設計できる
- コンパクトな平屋
- 地元業者が容易に対応できる設備を希望する
高齢者だから必ず第1種というわけではありません。温度差を優先するなら第1種、管理の簡単さや交換費を優先するなら第3種という選び方があります。
契約前の確認事項
住宅会社には次の内容を確認しましょう。
- 常時運転時の消費電力
- 月間・年間の電気代試算
- 寝室における運転音
- 各室の設計風量
- 完成時に風量測定を行うか
- フィルターの清掃・交換頻度
- フィルターの年間費用
- 本体の耐用年数と交換費
- 天井や壁を壊さず交換できるか
- 停電復旧後に自動運転するか
- 換気と全館空調が別系統か
まとめ
24時間換気は、正しく設計・管理すれば高齢者に大きな負担をかける設備ではありません。電気代は、一般的には月100~1,500円程度が目安ですが、方式や機種によって変わります。
シニア住宅では、性能の高さだけでなく、次の点を優先しましょう。
- 寝室で音が気にならない
- 給気が体へ直接当たらない
- 脚立なしでフィルター交換ができる
- 操作が簡単
- 地元で修理できる
- 宮崎の湿気・台風に対応できる
最も大切なのは、高価な換気設備を選ぶことではなく、必要な換気量が実際に確保され、将来も無理なく管理できることです。








