A.越境があるだけで、直ちに建替えができなくなるわけではありません。
ただし、境界線や塀の所有者が曖昧なままでは、設計・解体工事・住宅ローン・将来の売却で問題になる可能性があります。建替え前に、越境の方向と所有関係を確認しておくことが重要です。
まず確認する3つのケース
| 状況 | 主な問題 | 基本的な対応 |
|---|---|---|
| 自分の塀が隣地へ越境 | 隣地所有者から撤去・是正を求められる可能性 | 建替えに合わせて撤去し、自分の敷地内へ新設 |
| 隣地の塀が自分の敷地へ越境 | 勝手に撤去できない | 隣地所有者と撤去・移設について協議 |
| 境界線上に塀がある | 誰の所有物か判断しにくい | 境界確認と所有者確認を行い、双方合意の上で対応 |
特に古い住宅地では、「以前からここが境界だと思っていた」という認識と、登記や測量上の境界が異なるケースがあります。
建替えに影響しやすい場面
1.建物の配置や敷地面積が決められない
建物の配置、建ぺい率、外壁後退、採光、道路斜線などは、正しい敷地境界を基に検討します。境界が不明確だと、設計変更や確認申請のやり直しにつながる可能性があります。
また、塀が越境している部分を当然に自分の敷地として、建ぺい率や容積率の計算へ含められるわけではありません。
2.解体工事や工事車両の出入りに支障が出る
越境塀が狭い通路や搬入口にある場合、解体重機や工事車両が入れず、手壊し解体や小型重機への変更が必要になることがあります。
その結果、解体費や建築費が増える可能性もあります。
3.住宅ローンや将来の売却に影響する
金融機関や保証会社から、次の対応を求められる場合があります。
- 越境部分の撤去
- 境界確認書の提出
- 越境に関する覚書の提出
- 将来建替えるときに越境を解消する旨の合意
対応は金融機関によって異なるため、ローンの事前審査段階で越境の存在を伝えておくことが大切です。
4.塀の安全性が問題になる
越境問題とは別に、古いブロック塀に傾き、ひび割れ、ぐらつき、鉄筋不足などがある場合は、安全対策が必要です。
補強コンクリートブロック塀は、原則として高さ2.2m以下、一定の厚さ・鉄筋・基礎・控え壁などが求められます。外観で判断できない項目もあるため、建築士や専門業者による確認をおすすめします。国土交通省「ブロック塀等の安全対策」
建替え前に進める手順
1.既存資料を確認する
まず、次の書類を集めます。
- 登記事項証明書
- 公図
- 地積測量図
- 建築確認申請書や配置図
- 境界確認書
- 過去の売買契約書
- 塀を設置した際の工事資料
公図だけでは、現地の正確な境界位置まで判断できないことがあります。
2.土地家屋調査士へ現況測量を依頼する
境界標が見つからない、測量図と現況が違う、塀が境界線上にある場合は、土地家屋調査士に相談します。
測量によって、次の点を明らかにします。
- 境界線の位置
- 越境している方向
- 越境している長さや面積
- 塀の中心・基礎・控え壁の位置
- 建築可能な有効敷地
塀本体は敷地内でも、地下の基礎や隣地側へ突き出した控え壁が越境している場合があるため、注意が必要です。
3.隣地所有者と話し合う
測量結果を基に、隣地所有者へ説明します。感情的な対立を避けるため、最初から「撤去してください」と決めつけず、土地家屋調査士や建築会社に同席してもらう方法もあります。
4.撤去・移設または覚書を検討する
最も確実なのは、建替えに合わせて越境を解消することです。すぐに撤去できない場合は、双方で越境に関する覚書を作成します。
覚書には、一般的に次の内容を記載します。
- 越境している物と範囲
- 塀の所有者
- 現状を一時的に容認すること
- 土地の所有権を主張しないこと
- 将来の建替えや撤去時に越境を解消すること
- 維持管理費や事故責任の負担
- 土地を売却・相続する際の引継ぎ方法
ただし、覚書だけで建築計画や融資上の問題が必ず解消されるとは限りません。重要な案件では、土地家屋調査士に加えて弁護士や司法書士へ文案を確認してもらいましょう。
隣地の塀は勝手に壊せません
隣地所有者のブロック塀が自分の土地へ越境していても、自分の判断だけで撤去・切断することは避けてください。塀の損壊や工事中の事故をめぐり、損害賠償問題になるおそれがあります。
合意できない場合は、次の順番で専門家へ相談します。
- 土地家屋調査士による境界・越境の確認
- 建築士による建替えへの影響確認
- 弁護士による撤去請求や合意内容の確認
- 必要に応じて法務局の筆界特定制度などを検討
なお、筆界特定制度は公的な境界である「筆界」を明らかにする制度ですが、塀の所有権や撤去の可否まで一括して決める制度ではありません。
宮崎市のブロック塀補助制度
宮崎市では、道路に面し、一定の高さがあり、ひび割れ・傾き・ぐらつきなどがある危険なブロック塀について、除却または安全な塀への建替えを支援する制度があります。
ただし、2026年度分の申込受付は2026年6月30日で終了しています。 また、隣地境界の塀が制度の対象になるとは限らず、道路に面していることなどの要件があります。宮崎市「ブロック塀等の安全対策」
補助金を利用する場合は、通常、交付決定前に工事を始めると対象外になるため、翌年度以降の募集状況を工事前に確認してください。
費用は総予算へ入れておきましょう
越境塀がある建替えでは、建物本体以外に次の費用が発生する可能性があります。
- 現況測量・境界確定費用
- 塀の解体・処分費
- 新しい塀やフェンスの設置費
- 狭小地での解体割増費
- 覚書などの書類作成費
- 弁護士・司法書士への相談費
金額は境界点の数、隣接地の数、塀の長さや基礎の状態によって大きく変わります。見積りを取らずに、数十万円などと一律に予算計上しないことが大切です。
結論として、越境ブロック塀があっても建替えできる可能性は十分あります。
ただし、設計を進めてから発覚すると、工期延長や追加費用につながります。「現況測量→所有者確認→隣地協議→撤去または書面化」を、建築確認申請より前に進めるのが安全です。








