A. はい、同じ贈与者から新築資金の贈与を受ける場合、相続時精算課税が引き続き適用されます。
相続時精算課税は、土地の贈与ごと、建築資金の贈与ごとに選び直す制度ではありません。
一度、父または母など特定の贈与者について相続時精算課税を選択すると、その贈与者からその後に受ける贈与にも原則として相続時精算課税が適用されます。暦年課税へ戻すことはできません。国税庁「相続時精算課税の選択」
過去に土地を贈与され、新築資金も受け取る場合
例えば、以前に父から土地の贈与を受け、その際に相続時精算課税を選択していたとします。その後、同じ父から新築資金の贈与を受ける場合は、次のように考えます。
- 過去に贈与された土地:以前の相続時精算課税の対象
- 今回贈与される新築資金:引き続き相続時精算課税の対象
- 過去に使った特別控除:2,500万円から差し引く
- 今回利用できる特別控除:まだ使っていない残額
- 2024年以降の年間基礎控除:年間110万円
- 一定の住宅なら住宅取得等資金の非課税:別枠で併用可能
土地に建物を建てただけで、以前の土地贈与の評価額が変更されたり、新たな贈与税が発生したりするわけではありません。新しく建築資金を受け取った場合に、その資金について贈与税を計算します。
2,500万円の特別控除はもう一度使えますか?
相続時精算課税の特別控除2,500万円は、贈与のたびに使えるものではなく、贈与者一人につき生涯累計の限度額です。
| 過去に使った特別控除 | 今後使える残額 |
|---|---|
| 0円 | 2,500万円 |
| 500万円 | 2,000万円 |
| 1,500万円 | 1,000万円 |
| 2,500万円 | 0円 |
過去の申告書を確認し、実際に使用した特別控除額を把握する必要があります。
「土地の評価額が2,500万円以下だった」というだけでは、控除をいくら使ったか判断できません。年間基礎控除やほかの非課税制度が適用されている可能性があるため、贈与税申告書の控えを確認してください。
2024年から年間110万円の基礎控除があります
2024年1月1日以降の相続時精算課税には、年間110万円の基礎控除が設けられています。
基本的な控除の順番は次のとおりです。
- 住宅取得等資金の非課税枠
- 相続時精算課税の年間基礎控除110万円
- 相続時精算課税の特別控除残額
- 控除後の残額に20%課税
年間110万円の基礎控除は、2,500万円の特別控除とは別です。また、この年間基礎控除分は、贈与者が亡くなった際の相続財産へ原則として加算されません。
なお、相続時精算課税を選択した贈与者が複数いる場合などは、110万円の配分計算が必要になることがあります。
住宅取得等資金の非課税制度と併用できますか?
一定の要件を満たせば、相続時精算課税と「住宅取得等資金の非課税」を併用できます。
2026年12月31日までの贈与について、非課税限度額は次のとおりです。
| 新築する住宅 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 |
| それ以外の一定の住宅 | 500万円 |
この非課税枠を先に差し引き、残った建築資金に相続時精算課税の年間基礎控除110万円と、2,500万円の特別控除残額を適用します。国税庁「住宅取得等資金とそれ以外の財産を同一年中に贈与されたとき」
ただし、過去に住宅取得等資金の非課税制度を利用している場合は、今回使える非課税限度額が減ったり、利用できなかったりする可能性があります。
具体的な計算例
前提条件
- 過去に土地の贈与で特別控除を1,500万円使用
- 特別控除の残額は1,000万円
- 2026年に父から新築資金1,800万円を贈与
- 新居は非課税枠1,000万円の省エネ等住宅
- ほかに同年の贈与はない
- すべての適用要件を満たしている
計算イメージ
新築資金1,800万円から、次の順番で控除します。
- 住宅取得等資金の非課税:1,000万円
- 相続時精算課税の年間基礎控除:110万円
- 相続時精算課税の特別控除残額:690万円
この例では、贈与時の贈与税は0円になる計算です。
ただし、住宅取得資金の非課税1,000万円と年間基礎控除110万円を除き、相続時精算課税の対象となった690万円は、原則として父が亡くなったときの相続税計算へ加算されます。
特別控除2,500万円をすでに使い切っている場合
先ほどと同じ1,800万円の新築資金でも、特別控除残額が0円の場合は次のようになります。
- 新築資金:1,800万円
- 住宅取得等資金の非課税:1,000万円
- 年間基礎控除:110万円
- 課税対象:690万円
- 贈与税:690万円×20%=138万円
この138万円は、贈与者が亡くなった際の相続税計算で、一定の方法により相続税額から控除されます。控除しきれない場合は、相続税の申告によって還付されることがあります。
相続時精算課税は完全な非課税制度ではなく、贈与時の税金を相続時に精算する制度であることに注意しましょう。
住宅取得等資金の非課税を受ける主な条件
2026年に新築する場合、一般的に次の要件を確認します。
- 贈与者が父母・祖父母などの直系尊属
- 受贈者が贈与年の1月1日時点で18歳以上
- 受贈者の合計所得金額が原則2,000万円以下
- 床面積が原則40㎡以上240㎡以下
- 床面積40㎡以上50㎡未満の場合は、所得要件が原則1,000万円以下
- 贈与を受けた翌年3月15日までに資金全額を新築費へ充てる
- 翌年3月15日までに居住するか、その後遅滞なく居住する見込みがある
- 新居を受贈者本人が所有する
- 親族など特別な関係者から取得・請負を受けた住宅ではない
- 日本国内にある住宅である
- 期限内に贈与税申告を行う
省エネ等住宅として1,000万円の非課税枠を利用する場合は、住宅性能証明書なども必要です。国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
土地そのものの贈与にも住宅の非課税枠を使えますか?
住宅取得等資金の非課税制度は、住宅の新築・取得などに使う「金銭」の贈与が対象です。
したがって、過去に土地そのものを贈与されていた場合、その土地贈与へ後から住宅取得等資金の非課税枠を適用することはできません。
ただし、今回新たに贈与された現金を建物の新築費へ充てる場合は、その現金について非課税制度を利用できる可能性があります。
親が建築会社へ直接支払った場合も贈与ですか?
子ども名義の建物の建築費を親が建築会社へ直接支払った場合も、原則として子どもが建築費相当の利益を受けたものと考えられます。
子どもの口座を経由していないから贈与にならない、ということではありません。
住宅取得等資金の非課税制度を利用する場合は、資金の贈与、請負契約、振込記録、建物名義の関係が確認できるようにしておきましょう。
親名義の建物を建てる場合は使えますか?
住宅取得等資金の非課税制度は、原則として贈与を受けた子どもや孫が新居を取得し、居住することが必要です。
親名義の家を建てるために子どもが資金の贈与を受けても、子どもが住宅を取得していないため、特例を利用できない可能性があります。
建築費を負担する人、請負契約の注文者、建物の登記名義、居住者を一致させることが重要です。
住宅ローン控除との併用はできますか?
一定の要件を満たせば、住宅取得等資金の非課税制度と住宅ローン控除を併用できる場合があります。
ただし、住宅ローン控除の計算では、住宅の取得対価から住宅取得等資金の非課税制度を利用した金額を差し引く必要があります。
贈与額を増やせば必ず得になるとは限らないため、次の3案を比較しましょう。
- 贈与を多くして借入額を減らす
- 贈与を抑えて住宅ローン控除を活用する
- 老後資金を親に残し、子どもが借りる
贈与者が違う場合はどうなりますか?
相続時精算課税は、贈与者ごとに選択します。
例えば、父について相続時精算課税を選択済みでも、母からの贈与について自動的に相続時精算課税になるわけではありません。
- 父からの贈与:相続時精算課税
- 母からの贈与:暦年課税のまま、または別途相続時精算課税を選択
ただし、年間110万円の計算や住宅取得等資金の非課税限度額は、単純に贈与者の人数分増えるものではありません。父母両方から贈与を受ける場合は、事前に税理士へ試算を依頼しましょう。
新築前に確認する書類
- 過去の贈与税申告書
- 相続時精算課税選択届出書
- 過去に使用した特別控除額
- 過去の住宅取得資金非課税の利用額
- 土地の贈与契約書
- 土地・建物の登記事項証明書
- 新築工事請負契約書
- 建築資金の振込記録
- 住宅性能証明書など
- 受贈者の所得を確認できる書類
宮崎県で新築する場合の注意点
省エネ等住宅の1,000万円非課税枠を利用する場合、「高性能住宅だから当然対象になる」とは限りません。必要な性能証明書を期限内に取得できるか、建築会社へ契約前に確認してください。
また、土地を贈与した親と、建築資金を贈与する親が同じかどうかで計算が変わります。
安全な進め方は次のとおりです。
- 過去の贈与税申告書を税理士が確認
- 特別控除2,500万円の残額を計算
- 建物性能と非課税限度額を確認
- 親の老後資金を残せる贈与額を決める
- 建築費負担と建物名義を決める
- 贈与・請負契約・入金の時期を調整
- 翌年3月15日までに申告する
まとめ
相続時精算課税を選択済みでも、新築時の建築資金贈与に引き続き適用できます。
重要なポイントは次のとおりです。
- 同じ贈与者からの贈与には相続時精算課税が継続する
- 2,500万円の特別控除は生涯累計であり、使えるのは残額だけ
- 2024年以降は年間110万円の基礎控除がある
- 2026年末まで住宅取得等資金の非課税制度と併用できる可能性がある
- 過去に贈与された土地へ、後から住宅の非課税枠を適用することはできない
- 相続時精算課税の対象額は、将来の相続税計算へ原則として加算される
「新築時に贈与税がかからないか」だけでなく、親の老後資金と将来の相続税まで含めて判断しましょう。








