結論からいうと、気密性を高めること自体が、シックハウス症候群の原因になるわけではありません。
問題になるのは、建材・家具・防虫剤などから化学物質が発生しているのに、換気設備が止まっている、または計画どおり換気できていない状態です。
健康面とのバランスは、気密性を下げるのではなく、次の3点で確保します。
- 化学物質や湿気の発生源を減らす
- 24時間換気を確実に機能させる
- 引渡し後もフィルター清掃・湿度管理を続ける
シックハウス症候群とは?
住宅内の化学物質やカビ、ダニなどが関係して、次のような体調不良が起きる状態の総称です。
- 目・鼻・のどの刺激
- 頭痛やめまい
- 吐き気
- 皮膚のかゆみ
- 倦怠感
- 咳や息苦しさ
原因として考えられるものには、次のようなものがあります。
- 建材や接着剤から発散するホルムアルデヒドなど
- 塗料・ワックス・防虫剤・芳香剤
- 新しく購入した家具やカーテン
- 石油ストーブなどの燃焼機器
- カビ・ダニ・ほこり
- タバコや調理時の煙
- 清掃用品や殺虫剤
厚生労働省は、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどの室内濃度指針値を示しています。ただし、指針値以下でも、体質によって反応する可能性がないとは言い切れません。厚生労働省・室内空気中化学物質の指針値
高気密住宅のほうが危険なのですか?
適切に設計・施工された高気密住宅は、むしろ換気経路を管理しやすい住宅です。
隙間の多い住宅では、風の強さや外気温によって空気の出入りが変わります。窓や壁の隙間から空気が入っても、それが寝室やリビングを適切に通過しているとは限りません。
高気密住宅では、次のような経路を計画できます。
- 給気口から新鮮な空気を入れる
- 居室から廊下へ空気を流す
- トイレ・洗面所などから排気する
- 必要な換気量を機械で安定させる
つまり、高気密化によって空気を閉じ込めるのではなく、意図しない隙間風を減らし、必要な場所を計画的に換気するという考え方です。
24時間換気を止めなければ大丈夫ですか?
現在の住宅は、シックハウス対策として、原則として機械換気設備の設置が義務付けられています。一般的な住宅では、1時間に室内空気の半分程度を入れ替える、換気回数0.5回以上の設備が基本です。国土交通省・住宅等における換気
ただし、設備が付いているだけでは十分ではありません。
- 24時間換気のスイッチを切っている
- 給気口を寒いからと閉めている
- フィルターがほこりで詰まっている
- 室内ドアの下に空気が通る隙間がない
- 家具で給排気口をふさいでいる
- ダクトやファンの設計・施工が適切でない
- 入居後に間取りや建具を変更した
このような状態では、計画した換気量を確保できません。
引渡し時には、換気扇が動くかを見るだけでなく、各給排気口の風量を測定した報告書を確認すると安心です。
「F☆☆☆☆」の建材なら安全ですか?
F☆☆☆☆は、ホルムアルデヒドの発散量による建材の区分です。使用面積の制限を受けない最高区分ですが、次の点には注意が必要です。
- 化学物質の放散が完全にゼロという意味ではない
- すべてのVOCを保証する表示ではない
- 家具やカーテン、芳香剤などは別に確認が必要
- 複数の材料を大量に使えば、室内濃度に影響することがある
- 体質によって感じ方や反応が異なる
建築基準法では、建材の使用制限、24時間換気設備、天井裏などからの化学物質流入対策が定められています。国土交通省・建築基準法に基づくシックハウス対策
法律を守ることは最低条件です。化学物質に敏感な方は、内装材、接着剤、塗料、造作家具まで施工会社に確認しましょう。
健康面に配慮した住宅のつくり方
1.発生源を減らす
換気で薄めるだけでなく、最初から室内に放散される物質を減らすことが基本です。
- 低放散建材や接着剤を選ぶ
- 無垢材でも塗料・接着剤を確認する
- 造作家具の合板や接着剤を確認する
- 強いにおいのある塗料・ワックスを避ける
- 防虫剤・芳香剤を使い過ぎない
- 燃焼排気を室内に出す暖房機器を避ける
「自然素材だから必ず安全」とは限りません。木材、塗料、植物由来成分にも、体質によって反応する人がいます。
2.換気経路を確保する
寝室・リビングなどから給気し、トイレ・洗面所などへ空気が流れるように計画します。
建具を閉めた状態でも、ドア下のアンダーカットや通気建具を通して空気が移動できるか確認しましょう。
3.完成時に風量測定をする
設計上の換気量と、完成後の実際の換気量が一致するとは限りません。
次の測定を依頼すると安心です。
- 各給気口・排気口の風量
- 住宅全体の気密測定
- 必要に応じたホルムアルデヒド・VOC測定
- 室内温度・湿度
化学物質の測定は、測定対象や採取条件によって結果が変わるため、専門機関へ依頼します。
4.入居前に十分換気する
新築直後は、建材や接着剤などから放散される化学物質が多くなる可能性があります。
- 完成後も24時間換気を連続運転する
- 入居前に窓や収納扉を開けて換気する
- 室内が高温になる時期は特に注意する
- 押入れ・クローゼット・造作家具も開放する
においがなくても化学物質が存在する場合があり、反対に、木材などのにおいが直ちに有害とは限りません。においだけで判断しないことが大切です。
第1種換気と第3種換気はどちらが健康的?
どちらも正しく設計・管理されていれば採用できます。
| 換気方式 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 第1種換気 | 給気・排気とも機械で行う | 熱交換型は温湿度負荷を抑えやすいが、フィルター管理が必要 |
| 第3種換気 | 給気は自然、排気は機械で行う | 構造が比較的簡単だが、給気口付近が寒く感じる場合がある |
宮崎では、冷房期に入ってくる湿気への配慮が必要です。熱交換型を選ぶ場合も、梅雨時の湿度、結露、フィルター交換、ドレン排水、ダクト清掃の方法を確認しましょう。
高齢者住宅では、性能だけでなく、脚立を使わずフィルターを交換できるかも重要です。
宮崎ではカビ対策も重要です
シックハウス対策は、化学物質だけではありません。宮崎県の高温多湿な気候では、カビやダニへの対策も必要です。
- 室内湿度を確認できる温湿度計を置く
- 梅雨時はエアコンや除湿機を使用する
- 浴室・洗面所の換気を続ける
- 家具を外壁へ密着させない
- 押入れや収納内にも空気を流す
- 室内干しの湿気を適切に排出する
- エアコン内部を定期的に清掃する
一般的には、室内湿度をおおむね40~60%程度に保つと、乾燥とカビの両方を抑えやすくなります。ただし、建物や季節、健康状態に合わせて調整してください。
CO₂モニターがあれば安心ですか?
CO₂モニターは、在室人数に対して換気が不足していないかを判断する参考になります。しかし、ホルムアルデヒド、VOC、カビなどを直接測定するものではありません。
- CO₂モニター:換気状態を確認する参考
- 温湿度計:結露・カビ・乾燥対策
- VOC測定:特定の化学物質を確認
- においや体調:異常に気づくための手掛かり
一つの測定器だけで室内空気の安全性を保証することはできません。
シニア住宅で特に確認したいポイント
高齢になると、換気扇の音が気になったり、寒さを感じて給気口を閉じたりすることがあります。また、フィルター清掃が負担になる可能性もあります。
設計時に次の点を確認しましょう。
- 換気スイッチを誤って切りにくいか
- フィルターを低い位置で交換できるか
- 清掃時期を分かりやすく表示できるか
- 寝室で換気音が気にならないか
- 給気がベッドへ直接当たらないか
- 家族や管理業者に清掃を依頼できるか
- 交換フィルターを将来も購入できるか
複雑な高機能設備より、本人や家族が継続して管理できる設備のほうが適している場合があります。
症状が出た場合はどうする?
入居後に目やのどの刺激、頭痛、吐き気などが続き、屋外に出ると改善する場合は、次の対応を検討します。
- 窓を開けて換気する
- 24時間換気と給排気口を確認する
- 芳香剤・防虫剤など新しく持ち込んだ物を確認する
- 建築会社へ使用建材と換気風量の確認を依頼する
- 必要に応じて室内空気測定を行う
- 症状が続く場合は医療機関へ相談する
強い息苦しさや意識障害などがある場合は、室外へ移動して速やかに救急へ相談してください。
まとめ
高気密住宅がシックハウス症候群を起こすのではありません。リスクを高めるのは、汚染物質や湿気の発生源があり、換気が不足している状態です。
健康面とのバランスを取る方法は、住宅に隙間を増やすことではありません。
- 低放散材料を選ぶ
- 気密性を確保する
- 24時間換気を連続運転する
- 完成時に風量を測定する
- 宮崎の湿気に合わせて除湿する
- 清掃しやすい換気設備を選ぶ
シニアの建替えでは、断熱・気密・換気・空調を別々の商品として考えず、室温と空気の質を一体で設計することが大切です。








