結論
仮住まいの追加家賃は、まず入居者である施主が賃貸住宅側へ支払います。そのうえで、建築会社の責任によって新居の引渡しが遅れた場合は、追加家賃などを建築会社へ請求できる可能性があります。
ただし、自動的に補償されるわけではありません。次の3点が重要です。
- 工事請負契約書に「完成日・引渡日」が明記されている
- 遅延の原因が建築会社側にある
- 追加家賃などの損害を領収書で証明できる
契約前に、引渡し遅延時の費用負担を特約として明文化しておくのが最も確実です。
遅延原因によって負担者が変わります
| 遅延原因 | 追加家賃の基本的な考え方 |
|---|---|
| 建築会社の人員手配不足 | 建築会社へ請求できる可能性が高い |
| 発注忘れ・工程管理のミス | 建築会社へ請求できる可能性が高い |
| 施工不良によるやり直し | 建築会社へ請求できる可能性が高い |
| 下請会社との調整不足 | 原則として元請の建築会社側の問題 |
| 施主による設計変更 | 施主負担になる可能性が高い |
| 施主の仕様決定が遅れた | 施主負担になる可能性が高い |
| 施主側の支払い遅延 | 施主負担になる可能性が高い |
| 台風・豪雨・地震 | 契約の不可抗力条項による |
| 行政手続き・検査の遅れ | 原因と契約内容により個別判断 |
| 資材不足・納品遅延 | 予見・回避できたかにより判断が分かれる |
住宅リフォーム・紛争処理支援センターも、施工業者に原因がある遅延であれば、契約どおりに引渡しを受けていれば発生しなかった追加家賃を請求できる可能性があると案内しています。住まいるダイヤル「引渡しの遅延原因の仮住まい家賃は誰が持つ?」
台風や大雨による遅延は補償されますか?
宮崎県の建替えでは、台風・豪雨による遅延を想定しておく必要があります。
通常の雨天日数を考慮せず、最初から無理な工程を組んでいた場合は、すべてを不可抗力として扱えるとは限りません。一方、記録的豪雨、地震、災害による物流停止など、建築会社が予測・回避できない事情では、工期延長が認められ、追加家賃が補償されない場合があります。
契約書では、次の内容を確認してください。
- 不可抗力に該当する事由
- 通常の雨天と災害の区別
- 工期を延長できる日数
- 建築会社から施主への通知期限
- 不可抗力時の追加費用の負担者
単に「天候不良の場合は工期を延長できる」とだけ書かれている契約は、範囲が曖昧です。
請求対象になり得る費用
建築会社の責任による遅延では、次の費用が損害として認められる可能性があります。
- 仮住まいの追加家賃
- 共益費・管理費
- 駐車場の延長料金
- トランクルームの延長料金
- 賃貸契約の更新料・再契約料
- 家賃保証会社の更新料
- 引越し日の変更・キャンセル料金
- 家具・家電レンタルの延長料金
ただし、実際に発生した合理的な金額であることが必要です。高額なホテルへ移るなど、損害を不必要に拡大させた部分まで認められるとは限りません。
契約書、請求書、領収書、振込記録、建築会社とのメールを保管しましょう。
建築会社との契約で重要な8項目
1.「完成日」と「引渡日」を分けて記載する
工事請負契約書には、少なくとも次の日付を明記します。
- 着工予定日
- 工事完成予定日
- 完了検査予定日
- 建物引渡予定日
「完成予定は○月頃」「工期は約6か月」という表現だけでは、遅延の起算日が曖昧になります。
仮住まい費用に直接関係するのは、原則として実際に入居できる「引渡日」です。
2.工期延長は書面で合意する
工期を変更する場合は、口頭や電話だけで済ませず、変更契約書または合意書を作ります。
書面には次の事項を記載します。
- 遅延理由
- 変更前の引渡日
- 変更後の引渡日
- 延長日数
- 費用負担
- 仮住まい費用の扱い
- 今後さらに遅れた場合の対応
工期変更に署名する際、「追加家賃については別途協議」と記載するなど、補償を放棄したと受け取られないよう注意しましょう。
3.遅延損害金の計算方法
契約書に次の項目があるか確認します。
- 何日目から遅延になるか
- 1日当たりの違約金
- 計算の対象となる請負代金
- 違約金の上限
- 不可抗力の場合の免責
- 仮住まい家賃を別途請求できるか
国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款にも、受注者の責任で期限内に引き渡せない場合の違約金に関する条項があります。国土交通省「民間建設工事標準請負契約約款」
ただし、実際に建築会社が使用する約款は内容が異なります。「当社所定の約款です」と言われても、必ず全文を確認してください。
4.違約金と実費補償の関係
契約書によっては、遅延違約金を支払えば、それ以外の損害を請求できない内容になっていることがあります。
次のどちらなのかを確認しましょう。
- 遅延違約金とは別に、追加家賃などの実費も請求できる
- 遅延違約金にすべての損害が含まれる
施主にとっては、追加家賃、駐車場、トランクルーム、引越し変更料などの合理的な実費を別途補償する内容が安心です。
5.建築会社の通知義務
遅延が判明した場合、「直ちに書面で施主へ報告する」と定めます。
報告内容には、次の項目を含めます。
- 遅延原因
- 現在の工事進捗
- 新しい工程表
- 引渡し予定日
- 遅延防止策
- 仮住まい費用の扱い
突然「来週の引渡しはできません」と言われると、賃貸住宅の延長が間に合わない可能性があります。
6.施主による変更工事の扱い
設備や間取りを変更すると、建築会社から工期延長を求められる場合があります。
追加変更契約書には、金額だけでなく「工期が何日延びるか」を記載してもらいましょう。
「変更工事一式」という記録だけでは、最終的にどの変更が何日間の遅延原因になったのか分からなくなります。
7.仮住まい費用の補償範囲
「家賃相当額を補償する」という表現だけでは、共益費や駐車場代が対象外になる可能性があります。
対象費用を具体的に決めておきます。
- 家賃
- 共益費
- 駐車場代
- トランクルーム代
- 更新・再契約費用
- 引越し変更料金
補償開始日、上限額、支払時期も明記すると安心です。
8.引渡しの条件
工事が残っている状態で形式的に引渡しを受けると、その後の家賃補償を打ち切られるおそれがあります。
引渡し前に確認する項目は次のとおりです。
- 建物が安全に居住できる
- 電気・水道・排水が使える
- 完了検査等が完了している
- 重大な未施工部分がない
- 施主検査で確認した補修内容
- 鍵と必要書類を受領している
外構工事だけが残る場合などは、生活できる状態かを確認したうえで、残工事の期限を別紙に記載しましょう。
契約書へ加えたい特約の例
受注者の責めに帰すべき事由により、契約書記載の引渡予定日を超えて引渡しが行われた場合、受注者は、遅延期間中に発注者が合理的に負担した仮住まい家賃、共益費、駐車場料金、家財保管料及び引越し変更費用を、領収書等の確認に基づき負担する。工期の変更は、その理由、変更日数及び費用負担について書面で合意する。
これは考え方の例です。実際の契約では、使用する約款や工事内容に合わせて建築士・弁護士等へ確認してください。
すでに工期延長が発生している場合
- 工事請負契約書と約款を確認する
- 建築会社へ遅延理由を書面で求める
- 最新の工程表と引渡予定日を提出してもらう
- 賃貸管理会社へ延長できるか確認する
- 追加家賃などの見積書・領収書を保存する
- 費用負担について建築会社と合意書を作る
建築会社との合意がないまま、追加家賃を最終工事代金から一方的に差し引くのは避けましょう。支払いを巡る別のトラブルになる可能性があります。
話し合いで解決できない場合は、住まいるダイヤル、消費生活センター、弁護士などへ相談します。
シニア世帯では生活支援費も確認する
仮住まい期間が延びると、家賃以外に次の負担が増えることがあります。
- 通院交通費
- デイサービス送迎区域変更への対応
- 家具・介護用品のレンタル料
- ペット預かり費用
- 二重の水道光熱費
- 家族による介護支援の交通費
これらがすべて建築会社に請求できるとは限りませんが、建築会社の責任による遅延との因果関係がある場合に備えて記録を残しておきましょう。
まとめ
仮住まいが延びた場合、賃貸住宅への追加家賃は、いったん施主が支払うのが基本です。しかし、建築会社の工程管理ミスや施工不良などによる遅延であれば、追加家賃を請求できる可能性があります。
契約時には、完成日ではなく「引渡日」を明記し、遅延原因、補償対象、計算方法、不可抗力、通知期限、工期変更の手続きを書面で定めることが重要です。








