はい、設置できます。一般的な一戸建て住宅では、玄関に手すりやベンチを置くこと自体を禁止する建築基準法上の規定は通常ありません。
むしろシニア住宅では、靴の脱ぎ履きや上がり框の昇降を安全にするため、積極的に検討したい設備です。国土交通省の高齢者住宅向け設計指針でも、玄関への手すりや、ベンチを置ける空間の確保が推奨されています。国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」
建築基準法上、注意したいこと
一般住宅では厳しい設置制限はありませんが、次の点を守る必要があります。
- 玄関ドアの開閉を妨げない
- 避難時の通路を狭くしすぎない
- 手すりを十分な強度で固定する
- 消防設備や分電盤などをふさがない
- 防火戸がある場合は、その閉鎖を妨げない
- ベンチの角や脚が通行の障害にならない
- 共同住宅の場合は共用廊下へ物を置かない
特にマンションの玄関外側は共用部分であり、避難経路にもなるため、管理規約や消防上の制限を受けることがあります。今回のような戸建ての建替えでは、室内側に設置する限り大きな問題になることは通常ありません。
通路幅はどのくらい残せばよいですか?
一般的な戸建住宅の玄関内部について、一律に「ベンチ設置後は何cm必要」と定めた建築基準法の規定がすべての住宅に適用されるわけではありません。
ただし、高齢者対応住宅の設計目安では、日常生活上の通路について、手すりやベンチを設置した後も有効幅780mm以上、柱などがある部分は750mm以上を確保する考え方があります。国土交通省「高齢者住宅の基準」
将来の車いす利用を考える場合は、最低寸法だけではなく、次のスペースを確保すると使いやすくなります。
- 玄関の通行部分:有効幅800~900mm以上を目安
- 車いすで方向転換する場所:直径1,500mm程度を目安
- ベンチ前:立ち座りや介助ができる余裕
- 玄関扉:有効開口幅800mm程度を目標
- 手すりと壁の間:握れる隙間を確保
これらはすべての戸建住宅に義務付けられる法定寸法ではなく、将来の使いやすさを考えた設計目安です。
玄関にはどんな手すりが適していますか?
玄関では、用途によって縦手すりと横手すりを使い分けます。
| 種類 | 主な用途 | 設置位置 |
|---|---|---|
| 縦手すり | 上がり框を昇り降りする | 框の近く |
| 横手すり | 靴を脱ぎ履きするときの姿勢保持 | ベンチ付近 |
| L型手すり | 昇降と立ち座りの両方 | 框とベンチの間 |
| 跳ね上げ式 | 通行幅を確保したい場合 | 車いすの乗降場所 |
横手すりの高さは床から750mm前後が一つの目安ですが、身長や身体状態によって適切な高さは変わります。国の設計資料でも、移動用手すりは床面から75cmを標準とする考え方が示されています。国土交通省「住宅局長通達」
重要なのは、石こうボードだけにビスを留めないことです。新築時に壁の内部へ合板や下地材を入れ、身体を預けても外れないように固定します。
ベンチのおすすめ仕様
玄関ベンチは、次のような仕様が使いやすいでしょう。
- 座面高さ:400~450mm程度
- 座面奥行き:350~450mm程度
- 幅:600mm以上を目安
- 肘掛けまたは近くに手すりを設置
- 座面は柔らかすぎず、立ち上がりやすい硬さ
- 脚が通路側へ出ない形
- 角を丸くする
- 濡れた衣服でも滑りにくい素材
- 座ったまま靴を置ける収納を近くに設ける
ただし、座面が低すぎると立ち上がりにくくなります。現在使っている椅子で立ち座りしやすい高さを測り、それを基準に決める方法が確実です。
固定式と折りたたみ式はどちらがよいですか?
玄関が広ければ、肘掛け付きの固定ベンチが安定しています。玄関がコンパクトな場合は、壁付けの折りたたみ式が有効です。
ただし、折りたたみ式は次の点を確認してください。
- 高齢者本人が簡単に開閉できるか
- 開いた状態で自動的に固定されるか
- 壁の下地に確実に固定できるか
- 指を挟む危険がないか
- 使用後に戻さなくても通行を妨げないか
単に置くだけの軽い椅子は、立ち上がる際に動いたり倒れたりする可能性があります。置き型にする場合は、重量と脚部の滑り止めを確認しましょう。
宮崎県の住宅での注意点
宮崎では、台風や梅雨の時期に玄関土間が濡れやすくなります。手すりやベンチだけでなく、次の対策も組み合わせましょう。
- 滑りにくい玄関タイルを選ぶ
- 玄関ポーチに十分な庇を設ける
- 雨具を掛ける場所を確保する
- ベンチを濡れた傘の動線から離す
- 木製ベンチには湿気対策を行う
- 手すりは汗や水で滑りにくい材質を選ぶ
宮崎県も、玄関の上がり框に式台や腰掛けを設け、靴の履き替えや段差の昇降をしやすくすることを案内しています。宮崎県「バリアフリー・UD」
建替え時のおすすめ計画
シニア向けの玄関では、次の組み合わせが現実的です。
- 上がり框を低くする
- 框の横に縦またはL型手すりを設置
- 高さ約400~450mmのベンチを設置
- ベンチ設置後も十分な通行幅を確保
- 将来の追加手すり用に壁下地を広く入れる
- 車いす用の別動線またはスロープ設置余地を残す
法令を満たすだけでなく、「座る・靴を履く・手すりにつかまって立つ」という一連の動作を確認して配置することが大切です。








