A.断熱等級やUA値など、図面と仕様から計算できる性能は確認できます。しかし、完成した住宅に実際どのくらい隙間があるかは、気密測定をしなければ数値で確認できません。
住宅会社が「高気密仕様」「気密に配慮した施工」と説明しても、それは施工方針や仕様の説明です。今回建てた住宅の気密性能を証明するものではありません。
気密性能を重視するなら、完成する一棟ごとに気密測定を行い、C値と測定条件を確認することが大切です。
気密測定をしなくても確認できる性能
住宅性能の中には、設計図や計算書、証明書で確認できるものがあります。
| 性能 | 確認方法 |
|---|---|
| 断熱等級 | 外皮計算・住宅性能評価 |
| UA値 | 図面と断熱・窓仕様から計算 |
| ηAC値 | 窓・日射条件などから計算 |
| 一次エネルギー消費量 | 設備仕様などから計算 |
| 耐震等級 | 構造計算・住宅性能評価 |
| 使用する断熱材 | 仕様書・施工写真 |
| 窓・玄関ドア | 商品仕様書 |
| 換気設備 | 設備図・機器仕様書 |
| 気密性能・C値 | 原則として実邸の気密測定が必要 |
断熱性能と気密性能は関係しますが、同じものではありません。
気密測定をしなければ確認できないこと
実際のC値
C値は、住宅全体にどの程度の隙間があるかを表す数値です。
計算で決めるUA値とは異なり、実際の住宅へ測定機器を設置して確認します。
施工による隙間
同じ設計、断熱材、工法でも、施工状態によって隙間の量は変わります。
- 配線・配管の貫通部
- コンセント・スイッチ周辺
- 窓・玄関ドア周辺
- 床と壁の取合い
- 壁と天井の取合い
- 天井・床下点検口
- 換気ダクト
- エアコン配管穴
- 浴室周辺
これらの仕上がりは、仕様書だけでは判断できません。
隙間補修の必要性
中間時に気密測定を行えば、空気が漏れている部分を探し、内装工事前に補修できる可能性があります。
測定しなければ、大きな漏気箇所が残っていても気づかない場合があります。
UA値がよければ気密測定は不要ですか?
不要とはいえません。
UA値は、屋根、外壁、床、窓などを通して、どの程度熱が逃げるかを計算した数値です。一方、C値は建物の隙間を測定した数値です。
| 比較項目 | UA値 | C値 |
|---|---|---|
| 示す性能 | 外皮からの熱の逃げやすさ | 建物全体の隙間 |
| 確認方法 | 設計・仕様から計算 | 実際の住宅で測定 |
| 数値 | 小さいほど熱が逃げにくい | 小さいほど隙間が少ない |
| 施工品質の影響 | 施工状態は計算値へ直接反映されない | 完成した施工状態が反映される |
| 換気への影響 | 直接は判断できない | 計画換気へ関係する |
UA値がよいことは重要ですが、それだけでは高気密であることを証明できません。
断熱等級6なら高気密ですか?
断熱等級が高くても、C値がよいとは限りません。
断熱等級は主に外皮の断熱性能を評価します。気密測定を実施しなければ、今回の住宅の隙間量は分かりません。
- 高性能な断熱材
- 樹脂サッシ
- トリプルガラス
- 熱交換換気
- 高性能玄関ドア
これらを採用しても、接合部や貫通部の気密処理が不十分なら、隙間が残る可能性があります。
「高気密仕様」という説明だけで判断できますか?
「高気密仕様」には、全国で統一された一つの数値基準があるわけではありません。
住宅会社によって意味が異なる場合があります。
- 気密シートを施工している
- 気密テープを使用している
- 面材工法を採用している
- 高気密型の窓を使用している
- 施工マニュアルがある
- 過去に良好なC値が出ている
これらは気密性能を高めるために有効な要素ですが、今回の住宅の測定結果ではありません。
「高気密ですか」ではなく、次のように具体的に質問しましょう。
「今回建てる家を気密測定し、実測C値を報告してもらえますか?」
過去の平均C値で判断できますか?
住宅会社の過去実績は、施工体制を判断する参考にはなります。
しかし、次の条件で結果は変わります。
- 建物の形
- 延べ床面積
- 平屋・2階建て
- 窓や開口部の数
- 引き違い窓の数
- 工法
- 現場監督
- 施工する職人
- 配管・配線の数
- 測定時期
過去の平均C値がよくても、今回の住宅の性能を保証するものではありません。
平均値を確認したうえで、自分の住宅も測定することが重要です。
モデルハウスのC値で判断できますか?
モデルハウスのC値は、そのモデルハウスの結果です。
- 特別な施工チームが担当した
- 標準仕様と窓が異なる
- 開口部が少ない
- 通常より丁寧に施工した
- 自宅と形状が違う
- 測定条件が違う
モデルハウスの実績だけでなく、標準仕様の実邸を全棟測定しているか確認しましょう。
施工写真があれば確認できますか?
施工写真は、気密層や断熱材の施工状況を確認するうえで役立ちます。
ただし、写真だけでは住宅全体の隙間量を数値化できません。
写真で確認できること
- 気密シートの施工
- 気密テープ
- 配管貫通部の処理
- コンセント周辺
- 窓周辺
- 断熱材の充填状態
- 点検口周辺
写真だけでは確認できないこと
- 住宅全体のC値
- 写真に写っていない部分
- 小さな隙間の合計
- 建具を含めた最終的な漏気
- 工事後に追加された貫通部
- 完成状態の気密性能
施工写真と気密測定を組み合わせるのが安心です。
サーモグラフィーで気密性能を確認できますか?
サーモグラフィーは、室内表面の温度差や断熱欠損、漏気が疑われる箇所を確認する補助的な方法です。
ただし、サーモグラフィーだけではC値を算出できません。
また、測定結果は次の条件に影響されます。
- 室内外の温度差
- 日射
- 風
- 暖房・冷房の運転
- 家具やカーテン
- 測定時間
サーモグラフィーは部分的な診断には役立ちますが、気密測定の代わりにはなりません。
換気風量測定で気密性能は分かりますか?
換気風量測定では、給気口や排気口で必要な風量が確保されているかを確認できます。
これは重要な検査ですが、住宅全体の隙間量を示すC値とは別です。
- 気密測定:建物全体の隙間を確認
- 換気風量測定:各給排気口の風量を確認
高性能住宅では、両方を確認することが理想です。
完成後に住んで体感すれば分かりますか?
隙間風や寒さを感じることで、問題に気づく場合はあります。
しかし、体感だけでは正確な判断ができません。
- 家族によって感じ方が違う
- 外気温によって変わる
- エアコン能力で一時的に補える
- 隙間の位置が分からない
- 夏と冬で症状が違う
- 壁内への空気移動は体感できない
- ほかの住宅と比較しにくい
住み始めてから問題を感じても、壁や天井が完成しているため、補修が難しくなる可能性があります。
気密測定をしないと起こり得る問題
測定しないこと自体が、直ちに住宅性能の低さを意味するわけではありません。
丁寧に施工され、実際には気密性が高い住宅もあります。
ただし、測定しなければ次の点が不明なままです。
- 設計・施工目標を達成したか
- 住宅全体の隙間量
- 大きな漏気箇所の有無
- 補修が必要か
- 熱交換換気を生かせるか
- 現場ごとの施工のばらつき
- 高気密という説明の根拠
最大の問題は、「性能が悪いと決まること」ではなく、よいか悪いか確認できないことです。
気密測定を行うメリット
実邸の性能を数値で確認できる
モデルハウスや過去の平均ではなく、自分の住宅のC値を確認できます。
施工の不具合を発見しやすい
中間測定では、煙や手の感覚などを使って漏気箇所を探し、補修できる場合があります。
施工者の意識が高まりやすい
測定結果が出ることを前提にすると、配管や配線、窓周辺などの気密処理を確認しやすくなります。
換気計画の前提を確認できる
住宅の隙間を把握することで、計画換気が成立しやすい状態か判断する材料になります。
引渡し時の記録になる
測定報告書を保管すれば、新築時の性能記録として残せます。
気密測定は中間時と完成時のどちらがよい?
中間測定
内装仕上げ前に測定します。
メリット
- 漏気箇所を探しやすい
- 補修しやすい
- 気密層を直接確認できる
- 施工方法の改善につながる
注意点
- 玄関ドアや設備が仮の状態の場合がある
- 測定時の建物状態を記録する必要がある
- 完成後の追加工事による隙間は反映されない
完成測定
建物完成後に測定します。
メリット
- 引渡し時に近い状態を確認できる
- 窓・玄関ドアなどを含む最終結果を確認できる
- 記録として分かりやすい
注意点
- 数値が悪くても気密層を補修しにくい
- 壁や天井を開けなければ直せない場合がある
理想は2回測定
可能であれば、中間時に漏気を発見・補修し、完成時に最終確認する方法があります。
ただし、費用や工程は住宅会社へ確認してください。
気密測定の結果で確認すること
C値の数値だけでなく、次の情報を確認しましょう。
- 測定した日
- 測定時の工事状況
- 建物の延べ床面積
- 実質延べ床面積
- 総相当隙間面積
- C値
- 測定機器
- 測定者
- 窓・ドアの状態
- 給排気口の処理
- レンジフードの処理
- 補修前・補修後の数値
- 測定報告書の有無
測定条件が異なれば、数値の比較が難しくなる場合があります。
測定時に換気口をふさぐのは不正ですか?
気密測定では、計画的に設けられた換気口などを、定められた測定条件に従って処理する場合があります。
そのため、「換気口をふさいだ状態だから無意味」というわけではありません。
重要なのは、住宅会社独自の都合で条件を変更するのではなく、標準的な測定方法に従い、測定時の状態を記録することです。
目標C値を契約前に決めるべきですか?
気密性能を重視する場合は、契約前に次の内容を書面で確認することをおすすめします。
- 目標C値
- 測定回数
- 測定時期
- 測定費用
- 目標未達時の補修
- 再測定の有無
- 結果報告書
- 追加費用の扱い
測定するだけで、目標値や未達時の対応がなければ、結果を受け取って終わる可能性があります。
目標C値はどのくらい?
一つの目安として、C値1.0㎠/㎡以下を目標にする住宅会社があります。さらに高い気密性能を目指す会社では、0.5㎠/㎡前後以下を目標とする場合もあります。
ただし、極端に小さな数値だけを競う必要はありません。
- 換気方式
- 建物形状
- 開口部
- 工法
- 施工体制
- 費用
- 維持管理
これらを含め、住宅会社がどの水準を安定して全棟で実現できるかが重要です。
測定しない住宅会社は性能が低い?
必ずしも性能が低いとは限りません。
丁寧な気密施工を行い、過去に良好な実績がある会社もあります。
しかし、測定しなければ、今回の住宅の実測値は確認できません。
住宅会社へ、測定しない理由を聞きましょう。
- 会社として必要ないと考えている
- 標準費用に含めていない
- 希望すれば測定できる
- 測定業者を手配できない
- 気密の目標値を設定していない
- 工程上、測定する時期を確保していない
回答内容によって、気密性能に対する会社の考え方を判断できます。
測定を希望すると追加費用になりますか?
住宅会社によって異なります。
- 標準仕様に含まれる
- 1回のみ標準
- 2回目は追加費用
- 希望者のみ有料
- 外部測定業者へ依頼
- 測定費と再測定費が別
金額だけでなく、測定時期、報告書、補修対応まで確認しましょう。
気密測定以外に確認したい検査
高性能住宅では、気密測定だけでなく次の確認も重要です。
- 外皮性能計算
- 断熱材施工検査
- 防湿層の連続性
- 窓周辺の施工
- 換気風量測定
- サーモグラフィー検査
- 構造検査
- 防水検査
- 完成時設備検査
気密測定だけで住宅のすべての性能を証明できるわけではありません。
住宅会社への質問例
そのまま使える確認文です。
気密性能を重視したいと考えています。今回建てる住宅で気密測定を実施できますか。中間時と完成時の測定回数、目標C値、目標未達時の補修、再測定、結果報告書、追加費用について教えてください。
さらに確認する場合は、次の質問を加えます。
- 全棟で測定していますか
- 過去の平均値と最低・最高値はありますか
- 誰が測定しますか
- 測定条件は統一されていますか
- 施工中の気密写真を受け取れますか
- 換気風量も測定しますか
契約前のチェックリスト
- UA値とC値の違いを理解したか
- 高気密という言葉だけで判断していないか
- 今回の住宅を実際に測定するか
- 全棟測定か希望者のみか
- 測定費用が見積もりに含まれているか
- 目標C値を確認したか
- 目標値を書面で確認できるか
- 中間時に測定するか
- 完成時にも測定するか
- 測定条件を記録するか
- 目標未達時に補修するか
- 補修後に再測定するか
- 結果報告書を受け取れるか
- 過去の平均C値だけで判断していないか
- モデルハウスだけの数値ではないか
- 施工写真を受け取れるか
- 配管・配線貫通部を確認するか
- 窓・玄関ドア周辺を検査するか
- エアコン工事後の気密処理を確認するか
- 換気風量測定を行うか
- 断熱施工検査も行うか
- C値だけで住宅全体を判断していないか
デザインハウス宮崎の考え方
デザインハウス宮崎では、断熱等級やUA値などの計算値だけでなく、現場でその性能を実現できているかを確認することが重要だと考えています。
女性スタッフの生活目線から確認するのは次の内容です。
- 冬の足元や窓際の寒さ
- 夏の高温多湿な外気の侵入
- 第一種熱交換換気の働き
- 宮崎の梅雨時期の除湿
- トイレ・洗面脱衣室との温度差
- コンセント・配管周辺の気密処理
- エアコン設置時の貫通部
- 気密測定の実測結果
- 結果が悪い場合の補修
- 換気設備の風量
ツーバイフォー工法、ZEH水準、必要に応じた断熱等級6、第一種熱交換換気を採用しても、実際の隙間量を測定しなければ、完成した住宅のC値は分かりません。
設計上の性能と現場の実測値を分けて確認することを大切にしています。
まとめ
- 気密測定なしでもUA値や断熱等級は計算できる
- 実際のC値は、原則として実邸を測定しなければ分からない
- 高気密仕様という説明だけでは実測値にならない
- 過去の平均値やモデルハウスの数値は参考値
- 施工写真だけでは住宅全体の隙間量を確認できない
- サーモグラフィーは気密測定の代わりにはならない
- 換気風量測定と気密測定は確認する内容が異なる
- 中間測定は漏気箇所を補修しやすい
- 完成測定は引渡し時の最終状態を確認しやすい
- 目標C値と未達時の対応を契約前に確認する
- 気密測定だけでなく断熱・換気・防水も検査する
- 測定しない最大の問題は、性能がよいか確認できないこと
結論として、気密測定を行わない住宅でも、UA値、断熱等級、窓や断熱材の仕様は確認できます。しかし、完成した住宅の実際の気密性能とC値は確認できません。「高気密仕様」という言葉だけで判断せず、実邸の測定、目標値、補修、再測定、結果報告書まで契約前に確認することをおすすめします。








