「グラスウールと吹付ウレタンでは、どちらがよいですか?」
「一番性能の高い断熱材を選べば、暖かい家になりますか?」
断熱材について調べ始めると、材料の種類や熱伝導率、メーカーごとの商品名が気になります。
しかし、先に結論をお伝えすると、高性能な断熱材を選んでも、施工に隙間や厚さ不足があれば、本来の性能を発揮できません。
反対に、一般的な断熱材でも、必要な厚さを確保し、隙間なく丁寧に施工すれば、十分な断熱性能を実現できます。
断熱材選びで本当に大切なのは、
材料の性能×施工厚さ×施工精度×検査
です。
高性能な断熱材だけでは暖かい家にならない
断熱材には、さまざまな種類があります。
- グラスウール
- ロックウール
- 吹付硬質ウレタンフォーム
- 硬質ウレタンフォームボード
- フェノールフォーム
- ポリスチレンフォーム
- セルロースファイバー
それぞれ熱伝導率、価格、燃えにくさ、吸水性、施工方法などが異なります。
しかし、カタログに書かれた性能は、あくまで断熱材が正しい厚さで、隙間なく施工された場合の性能です。
実際の現場で、
- 断熱材が入っていない部分がある
- 柱や配管のまわりに隙間がある
- 必要な厚さを確保できていない
- 断熱材が押しつぶされている
- 防湿・気密層が途中で切れている
といった状態になれば、計算上の性能と実際の住み心地に差が生じます。
断熱材の小さな隙間が影響する理由
断熱材が連続して施工されていない部分を「断熱欠損」と呼びます。
壁の大部分に高性能な断熱材が入っていても、一部に隙間があれば、その部分から熱が集中的に出入りします。
冬には、断熱欠損部分の室内側表面温度が低くなり、
- 壁の一部だけ冷たくなる
- 冷気を感じる
- 結露が発生しやすくなる
- カビの原因になる
- 暖房効率が低下する
可能性があります。
夏には、屋根や外壁からの熱が室内へ伝わりやすくなります。
断熱性能は、平均的に断熱材が入っていればよいのではありません。屋根、壁、床を切れ目なく包むことが大切です。
断熱材は「厚さ」が不足すると性能が下がる
同じ断熱材でも、施工する厚さによって性能は変わります。
熱を伝えにくい材料を使っても、設計より薄く施工されていれば、予定していた断熱性能を確保できません。
特に吹付ウレタンは、現場で発泡させるため、場所によって厚さにばらつきが生じることがあります。
- 柱の角
- 梁の下
- 筋かいや金物の周辺
- 配線や配管の裏側
- 屋根と壁の取り合い
- 狭くて吹き付けにくい部分
は、厚さが不足しやすい場所です。
平均厚さだけでなく、薄い部分がないかを複数箇所で測定する必要があります。
グラスウールは施工が悪いと性能が出ない?
グラスウールについて、「ずれ落ちる」「湿気を吸う」「性能が低い」と説明されることがあります。
しかし、グラスウール自体が低性能というわけではありません。
適切な密度と厚さの製品を選び、正しく施工すれば、高い断熱性能を確保できます。
注意したいのは、次のような施工です。
- 壁の寸法に合わない断熱材を入れる
- 無理に押し込んでつぶす
- 柱との間に隙間を残す
- 配線の手前だけに入れる
- 筋かいや金物の裏側に入っていない
- コンセントまわりに欠損がある
- 防湿層が連続していない
- 断熱材を雨にぬらす
グラスウールは、壁の中へただ押し込むものではありません。
壁の形状に合わせて切り、配線や金物の裏側まで入れ、室内側の防湿・気密層を連続させる必要があります。
吹付ウレタンなら施工品質の心配はない?
吹付ウレタンは柱や配管のまわりに密着しやすく、複雑な場所でも隙間を埋めやすい断熱材です。
しかし、吹き付ければ自動的に高断熱・高気密になるわけではありません。
確認したいのは、次の点です。
- 設計どおりの厚さがあるか
- 柱や梁の隅まで充填されているか
- 発泡不足や大きな気泡がないか
- 吹付後に収縮や剝離が起きていないか
- 削りすぎて薄くなっていないか
- 設備工事で傷つけられていないか
- 屋根と壁の境目が連続しているか
- 気密層をどこで確保しているか
吹付ウレタンでも、施工後に厚さを測り、記録を残すことが重要です。
ボード系断熱材は継ぎ目が重要
フェノールフォームや硬質ウレタンフォームなどの板状断熱材は、工場で製造されるため、材料そのものの品質や厚さが安定しています。
一方、現場では板と板の継ぎ目が弱点になります。
- 継ぎ目に隙間がある
- 切断寸法が合っていない
- 窓まわりに隙間がある
- 配管貫通部が処理されていない
- テープが浮いている
- 建物の角で断熱材が連続していない
といった状態では、熱や空気が出入りする原因になります。
材料の表面だけを見るのではなく、継ぎ目、角、窓まわり、配管まわりを確認する必要があります。
断熱と気密は別の性能
断熱と気密は、混同されやすい言葉です。
断熱
屋根、壁、床、窓などを通じて熱が移動することを抑える性能です。
気密
建物の隙間から空気が出入りすることを抑える性能です。
厚い断熱材を入れても、建物に隙間が多ければ、暖かい空気や冷やした空気が外へ逃げます。
また、室内の湿気を含んだ空気が壁の中へ入り、内部結露を起こす可能性もあります。
快適な住宅をつくるには、断熱材を連続させる「断熱ライン」と、隙間を防ぐ「気密ライン」の両方が必要です。
気密性能は目で見ただけでは分からない
断熱材の施工状態は、壁をふさぐ前であれば目視できます。
しかし、建物全体にどの程度の隙間があるかは、見た目だけでは分かりません。
そこで必要になるのが、気密測定です。
気密測定では、建物を機械で加圧または減圧し、住宅全体の隙間の大きさを測定します。その結果を示す代表的な数値が「C値」です。
C値は、住宅の床面積1平方メートル当たりに、どれくらいの隙間があるかを表します。一般的には、数値が小さいほど隙間が少ない住宅です。
気密測定を行うことで、
- 施工上の隙間が多くないか
- 窓や玄関ドアまわりに漏気がないか
- 配管・配線の貫通部が処理されているか
- 設計した換気が機能しやすい状態か
を確認できます。
デザインハウス宮崎では、全棟で気密測定を行い、施工品質を数値で確認することを大切にしています。
気密測定はいつ行う?
気密測定には、主に次の二つのタイミングがあります。
工事途中の測定
断熱・気密工事が終わり、内装材で隠れる前に行います。
隙間が見つかった場合に、その場で原因を探して補修しやすいことがメリットです。
完成時の測定
住宅が完成した状態で、最終的な気密性能を確認します。
実際に引き渡される住宅のC値を確認できますが、壁や天井が仕上がっているため、大きな補修は難しくなる場合があります。
可能であれば、工事途中と完成時の2回測定するのが理想的です。
1回だけの場合は、測定時期、目標C値、数値を満たせなかった場合の対応を契約前に確認しましょう。
防湿層の施工も重要
室内の空気には水蒸気が含まれています。
この水蒸気が壁や天井の中へ入り、温度の低い場所で冷やされると、内部結露が発生する可能性があります。
内部結露が続くと、
- 木材の腐朽
- カビの発生
- 断熱性能の低下
- 金物の腐食
- シロアリ被害のリスク上昇
につながります。
そのため、断熱材の種類に応じて、防湿層を適切に設計・施工しなければなりません。
防湿シートを使用する場合は、ただ壁に張るだけではなく、
- シート同士の重なり
- 天井と壁の接続部分
- 床と壁の取り合い
- コンセントやスイッチ
- 配線・配管の貫通部
- 窓や玄関ドアの周囲
まで連続して処理する必要があります。
宮崎では夏型結露にも注意する
宮崎は高温多湿で、夏に冷房を長時間使用します。
屋外の高温多湿な空気が壁の中へ入り、冷房で冷えた室内側の部材に触れると、壁内で結露する可能性があります。これを一般的に「夏型結露」または「逆転結露」と呼びます。
そのため、寒冷地と同じ方法をそのまま採用すればよいとは限りません。
宮崎では、
- 外壁通気層を連続させる
- 透湿防水シートを正しく施工する
- 雨水を壁内へ入れない
- 壁の構成に合った防湿層を選ぶ
- 室内の冷やしすぎと高湿度を避ける
- 第一種換気と冷房・除湿を適切に計画する
- 必要に応じて結露計算を行う
ことが重要です。
「調湿する断熱材だから結露しない」「吹付ウレタンだから防湿シートは不要」と一律に判断せず、壁全体の構成で検討する必要があります。
外壁通気層は断熱材と同じくらい重要
外壁の内側には、湿気や侵入した雨水を排出するための通気層を設けます。
通気層が途中でふさがれていたり、空気の入口・出口が確保されていなかったりすると、湿気を十分に排出できません。
特に確認したいのは、
- 土台部分の通気入口
- 軒裏などの通気出口
- 窓の上下
- バルコニーまわり
- 配管や設備の周辺
- 外壁の入隅・出隅
- 防火部材との取り合い
です。
高性能な断熱材を使っても、壁の中へ雨水が入り、湿気を排出できなければ、住宅の耐久性に影響します。
電気・設備工事の後も確認する
断熱工事がきれいに終わっても、その後の工事で断熱層や気密層が傷つくことがあります。
- 電気配線を追加する
- コンセントボックスを取り付ける
- エアコン配管を通す
- 給排水管を施工する
- 換気ダクトを取り付ける
- 壁に下地を追加する
といった工事によって、防湿シートが破れたり、断熱材が押しつぶされたりする可能性があります。
そのため、断熱工事直後だけでなく、設備配管や電気配線が終わった段階でも確認する必要があります。
現場で確認したい施工ポイント
壁
- 柱や間柱の間に隙間なく入っているか
- 筋かいや金物の裏側まで施工されているか
- 配線や配管のまわりに欠損がないか
- 断熱材がつぶれていないか
- 防湿・気密層が連続しているか
天井・屋根
- 壁の断熱材と連続しているか
- 軒先まで適切に施工されているか
- ダウンライトや配線まわりに隙間がないか
- 吹付断熱の厚さが不足していないか
- 小屋裏換気や通気層をふさいでいないか
床・基礎
- 床断熱材が垂れ下がっていないか
- 根太や配管まわりに隙間がないか
- 土台と床の取り合いが処理されているか
- 浴室や玄関まわりの断熱が連続しているか
- 基礎断熱の場合は防蟻対策があるか
窓・玄関ドア
- サッシと構造体の間に隙間がないか
- 防水テープが正しく施工されているか
- 断熱材と気密層が窓枠まで連続しているか
- 玄関土間部分の断熱が切れていないか
施工写真はどこまで残してもらう?
完成後には断熱材が壁や天井の内側へ隠れてしまいます。
そのため、施工中の写真記録は非常に重要です。
最低限、次の場所を撮影してもらいましょう。
- 各部屋の壁全体
- 屋根または天井
- 床または基礎
- 建物の四隅
- 窓と玄関ドアの周囲
- 配管・配線の貫通部
- 浴室・洗面脱衣室
- コンセントまわり
- 吹付断熱の厚さ測定部分
- 気密測定の結果
同じ場所を遠景と近景で撮影し、どの部屋のどの部分か分かるように記録することが大切です。
第三者検査があれば安心?
第三者検査は施工品質を確認する有効な方法ですが、検査があるだけで安心とは限りません。
確認したいのは、
- 誰が検査するのか
- どの工程で検査するのか
- 何項目を確認するのか
- 断熱材の厚さを測定するのか
- 気密層まで確認するのか
- 指摘事項を誰が補修するのか
- 補修後の再検査があるか
- 検査報告書を施主が受け取れるか
です。
検査会社の名称だけでなく、検査内容と是正の仕組みまで確認しましょう。
施工品質の高い住宅会社を見分ける質問
住宅会社には、次のように質問してみましょう。
- 断熱施工の標準マニュアルはありますか
- 断熱工事を担当する職人は決まっていますか
- 現場監督はどの工程で確認しますか
- 断熱材の厚さをどのように測りますか
- 断熱施工の写真を受け取れますか
- 防湿層と気密層はどこに設けますか
- 配管貫通部はどのように処理しますか
- 全棟で気密測定を行いますか
- C値の目標はいくつですか
- 測定結果が目標未達の場合はどうしますか
- 壁を閉じる前に施主が現場を確認できますか
- 第三者検査の報告書を受け取れますか
これらの質問に、図面、写真、数値、施工手順を示しながら答えられる住宅会社は、施工管理への意識が高いと考えられます。
反対に、「いつも丁寧に施工しています」「職人に任せています」という説明だけでは、実際の品質を確認できません。
断熱性能を確認する4つの資料
完成時には、次の資料を受け取ることをおすすめします。
1.外皮計算書
屋根、壁、床、窓などを含めたUA値と、その計算根拠を確認できます。
2.断熱材の仕様書
断熱材の商品名、熱伝導率、密度、施工厚さなどを確認できます。
3.施工写真
壁や天井で隠れる前の断熱・防湿・気密施工を確認できます。
4.気密測定報告書
完成した住宅にどの程度の隙間があるかを、C値で確認できます。
計算書だけ、写真だけ、測定結果だけではなく、設計・施工・実測の3段階で確認することが理想です。
断熱材の種類と施工品質、どちらを優先する?
断熱材の種類も重要ですが、予算に限りがある場合は、材料の名称や最高性能だけを追い求める前に、次の項目を優先したいところです。
- 必要な断熱等級とUA値を決める
- 部位ごとに必要な厚さを確保する
- 断熱・気密・防湿ラインを設計する
- 経験のある職人が施工する
- 壁を閉じる前に検査する
- 施工写真を記録する
- 気密測定でC値を確認する
- 不具合があれば補修して再確認する
高価な断熱材へ変更するより、施工検査や気密測定へ予算を使う方が、実際の性能を確実にできる場合があります。
私たちが考える断熱施工
断熱材は、完成後にはほとんど見えなくなります。
キッチンや壁紙のように簡単に交換できるものでもありません。施工不良を直すには、壁や天井を解体する大がかりな工事が必要になる場合があります。
だからこそ、新築時に、
- 設計どおりの断熱材を使用する
- 必要な厚さを確保する
- 隙間やつぶれをなくす
- 防湿・気密層を連続させる
- 宮崎の湿度と日射に合わせる
- 写真と検査で施工状態を確認する
- 全棟気密測定で性能を数値化する
ことが大切です。
株式会社ツチモチとデザインハウス宮崎が目指すのは、カタログの数値だけが高い家ではありません。
北海道で学んだ断熱・気密の考え方を、宮崎の強い日差し、高温多湿、台風、シロアリなどの地域条件に合わせ、現場で確実に形にすることです。
断熱材の性能は、選んだ瞬間ではなく、正しく施工されて初めて住宅の性能になります。
それが、私たちの考える「宮崎型高性能住宅」の断熱施工です。








