「グラスウール、吹付ウレタン、セルロースファイバーなど、どの断熱材が一番よいのでしょうか?」
家づくりを検討していると、さまざまな断熱材の商品名や性能を目にします。住宅会社によって説明も異なるため、迷う方は少なくありません。
先に結論をお伝えすると、すべての住宅に共通する“一番よい断熱材”はありません。
大切なのは、断熱材の商品名だけではなく、
- 必要な断熱性能を確保できるか
- 壁・屋根・床に適した厚さを施工できるか
- 隙間や欠損なく施工できるか
- 宮崎の高温多湿に合った防湿・通気計画になっているか
- 長期間、性能を維持できるか
- 現場で適切に検査されるか
という点です。
断熱材は「何を使うか」と同じくらい、「どのように設計し、施工し、確認するか」が重要です。
断熱材にはどのような役割がある?
断熱材は、室内と屋外の間で熱が移動するのを抑えるための建材です。
冬は室内の暖かさが外へ逃げるのを抑え、夏は屋外の熱が室内へ伝わるのを抑えます。
断熱性能を高めることで、次のような効果が期待できます。
- 冷暖房が効きやすくなる
- 室温が変化しにくくなる
- 部屋ごとの温度差を小さくしやすい
- 壁や天井の表面温度が安定する
- 冬のヒートショック対策につながる
- 冷暖房費を抑えやすくなる
- 結露やカビのリスクを抑えやすくなる
ただし、断熱材を厚く入れるだけでは、快適な住宅にはなりません。
窓、気密、換気、日射、冷暖房、防湿、施工品質を一体で考える必要があります。
断熱材は「名前」より数値を見る
断熱材を比較するときに確認したいのが「熱伝導率」です。
熱伝導率は、材料がどれくらい熱を伝えやすいかを示す数値で、一般的には数値が小さいほど熱を伝えにくい材料です。
ただし、熱伝導率だけで住宅の断熱性能は決まりません。
実際の断熱性能は、おおむね次の二つによって変わります。
- 断熱材の熱伝導率
- 施工する厚さ
熱伝導率が低い高性能な断熱材でも、施工する厚さが薄ければ、十分な性能にならない場合があります。
反対に、熱伝導率が多少大きい断熱材でも、必要な厚さを確保すれば、目標性能を満たせることがあります。
比較するときは、材料名だけでなく、熱伝導率・厚さ・熱抵抗値まで確認することが大切です。
代表的な断熱材の種類
住宅で使用される断熱材は、大きく次のように分けられます。
- 繊維系断熱材
- 発泡プラスチック系断熱材
- 自然素材系断熱材
それぞれに長所と注意点があります。
グラスウール
ガラスを細い繊維状に加工した断熱材です。日本の木造住宅で広く使用されています。
メリット
- 比較的費用を抑えやすい
- 不燃性が高い
- シロアリの食害を受けにくい
- 吸音性がある
- 製品の種類が多い
- 適切に施工すれば高い断熱性能を確保できる
- 施工後の状態を比較的確認しやすい
注意点
グラスウールは、施工者の技術によって仕上がりに差が出やすい断熱材です。
- 柱や配線まわりに隙間がある
- 筋かいや金物の裏側に入っていない
- 断熱材が押し込まれている
- 室内側の防湿層が連続していない
- コンセントまわりに欠損がある
といった状態では、本来の性能を十分に発揮できません。
グラスウールそのものが悪いのではなく、正しい寸法で、隙間なく、つぶさずに施工できるかが重要です。
ロックウール
玄武岩などを高温で溶かし、繊維状に加工した断熱材です。
グラスウールと同じ無機繊維系に分類されます。
メリット
- 不燃性・耐熱性が高い
- 吸音性がある
- シロアリの食害を受けにくい
- 適切に施工すれば性能が安定する
- 高温になりやすい場所にも使用しやすい
注意点
グラスウールと同様に、隙間、つぶれ、防湿層の不連続などがあると性能を十分に発揮できません。
製品の密度や厚さも確認する必要があります。
吹付硬質ウレタンフォーム
建築現場で液体状の材料を吹き付け、発泡させる断熱材です。
柱や配管のまわりにも密着しやすいため、複雑な形状でも隙間を埋めやすいことが特徴です。
メリット
- 柱や配管まわりへ施工しやすい
- 複雑な形状にも対応しやすい
- 隙間を減らしやすい
- 断熱材がずれ落ちにくい
- 気密性能を確保しやすい傾向がある
注意点
吹付ウレタンでも、施工すれば自動的に高断熱・高気密になるわけではありません。
- 厚さにばらつきがある
- 柱の隅まで十分に入っていない
- 必要な厚さを確保していない
- 発泡後の収縮や切削状態に問題がある
- 電気配線や設備工事で傷つけられる
- 気密層の考え方が曖昧
- 防火上必要な内装材が適切に施工されていない
といった場合には、性能が低下します。
吹付後には、目視だけでなく、施工厚さを複数箇所で測定して記録することが重要です。
硬質ウレタンフォームボード
工場で板状に成形された発泡プラスチック系断熱材です。
柱の外側へ張る外張り断熱や、床断熱などに使用されます。
メリット
- 比較的薄い厚さでも性能を確保しやすい
- 工場製品のため品質が安定しやすい
- 柱の外側に施工すれば熱橋を減らしやすい
- 吸水しにくい製品が多い
注意点
板と板の継ぎ目や、窓・配管まわりに隙間ができると性能が低下します。
外張りで厚く施工する場合は、外壁材の固定方法や長期的な垂れ下がり、耐震・耐風上の納まりまで確認する必要があります。
フェノールフォーム
フェノール樹脂を発泡させた板状の断熱材です。
熱伝導率が小さい製品が多く、比較的薄い厚さで高い断熱性能を確保しやすいことが特徴です。
メリット
- 高い断熱性能を確保しやすい
- 薄くても性能を高めやすい
- 外張り断熱に使用しやすい
- 熱橋対策に活用しやすい
注意点
- 材料費が高くなる傾向がある
- 板の継ぎ目や加工部分の施工精度が必要
- 製品に応じた吸水・防水対策が必要
- 外壁や屋根の固定方法を検討する必要がある
高性能な材料を使用しても、継ぎ目に隙間があれば、本来の性能を十分に発揮できません。
押出法ポリスチレンフォーム
板状の発泡プラスチック系断熱材で、床下、基礎、土に近い部分などでよく使用されます。
メリット
- 吸水しにくい
- 圧縮に比較的強い
- 床や基礎の断熱に使いやすい
- 工場製品のため品質が安定しやすい
注意点
- 板の継ぎ目に隙間ができやすい
- 配管や基礎形状に合わせた施工が必要
- 防蟻対策を確認する必要がある
- 紫外線や火気から保護する必要がある
宮崎ではシロアリ対策が重要なため、基礎周辺に使用する場合は、断熱材だけでなく防蟻処理と点検方法まで確認しましょう。
セルロースファイバー
新聞紙などの木質繊維を原料とし、壁や天井の中へ吹き込む断熱材です。
メリット
- 隙間へ充填しやすい
- 吸音性が高い
- 調湿性がある
- 木質由来の材料を活用している
- 防音性を重視する住宅と相性がよい
注意点
- 施工費が高くなる場合がある
- 専門的な施工技術が必要
- 適正な密度で充填しないと沈下する可能性がある
- 調湿性があっても、防湿・防水計画が不要になるわけではない
- 雨漏りや大量の水分を処理できる材料ではない
「自然素材だから結露しない」「湿気をすべて吸ってくれる」という説明だけで判断してはいけません。
宮崎の高温多湿に対応するためには、壁全体の湿気の動きを計算し、適切な防湿・通気計画を立てる必要があります。
主な断熱材の比較
| 断熱材 | 主な特徴 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| グラスウール | 費用と性能のバランス、不燃性 | 隙間・つぶれ・防湿施工 |
| ロックウール | 不燃性、耐熱性、吸音性 | 充填精度と防湿施工 |
| 吹付ウレタン | 複雑な部分にも密着しやすい | 厚さのばらつき、検査、防火 |
| ウレタンボード | 薄くても性能を確保しやすい | 継ぎ目、固定方法 |
| フェノールフォーム | 高い断熱性能を得やすい | 費用、継ぎ目、吸水対策 |
| ポリスチレンフォーム | 吸水しにくく床・基礎向き | 継ぎ目、防蟻対策 |
| セルロースファイバー | 吸音性、調湿性 | 施工密度、沈下、防湿計画 |
どの断熱材にも、適した使用場所と施工方法があります。
住宅全体を一種類に統一せず、屋根・壁・床・基礎によって使い分ける方法もあります。
宮崎では何を重視すべき?
夏の屋根・天井から入る熱
宮崎では、強い日差しによって屋根や小屋裏が高温になります。
そのため、壁だけでなく、屋根または天井の断熱性能を十分に確保することが重要です。
- 屋根断熱か天井断熱か
- 断熱材の種類と厚さ
- 小屋裏の換気方法
- 屋根面の日射対策
- 断熱材の欠損がないか
を確認しましょう。
「壁の断熱材が高性能だから安心」ではなく、屋根や天井を含めた外皮全体で考える必要があります。
高温多湿と壁内結露
宮崎は、夏の気温と湿度が高い地域です。
冬の内部結露だけでなく、冷房した室内側へ外部の湿気が移動する「夏型結露」にも注意が必要です。
壁の構成を考えるときは、
- 室内側の防湿層
- 外側の透湿防水シート
- 通気層
- 断熱材の透湿性
- 冷房時の室温と湿度
- 外壁材と下地の構成
を一体で検討します。
防湿シートを設ければ必ず安心、調湿性のある断熱材なら防湿層が不要、という単純なものではありません。
使用する断熱材と壁の構成に応じて、湿気がどの方向へ移動し、どこで結露する可能性があるのかを確認する必要があります。
台風時の雨水対策
断熱材は雨漏りを防ぐ材料ではありません。
宮崎では台風や横殴りの雨があるため、
- 屋根と外壁の防水
- 窓まわりの防水処理
- 透湿防水シートの施工
- 通気層の連続性
- 配管貫通部の防水
- 雨漏り発生時に点検できる構造
が重要です。
水に強い断熱材を選ぶことより、まず雨水を壁や屋根の内部へ入れない施工が基本です。
シロアリ対策
宮崎では、温暖で湿度が高いため、シロアリへの対策も欠かせません。
断熱材の種類だけでなく、
- 防蟻処理
- 基礎形状
- 断熱材の施工位置
- 配管貫通部
- 基礎断熱と床断熱の違い
- 定期点検の方法
- シロアリの侵入経路を確認できるか
まで考える必要があります。
シロアリは断熱材そのものを栄養として食べなくても、断熱材の内部や隙間を通って木部へ到達することがあります。
充填断熱と外張り断熱の違い
充填断熱
柱や間柱の間に断熱材を入れる方法です。
壁の厚みを利用できるため、費用を抑えやすいのが特徴です。
ただし、柱や梁などの木材部分は断熱材より熱を伝えやすいため、「熱橋」となります。また、配線や金物まわりの施工精度が重要です。
外張り断熱
柱や構造材の外側を板状の断熱材で包む方法です。
構造材を外側から連続して覆うため、熱橋を減らしやすくなります。
一方で、断熱材を厚くすると、外壁材の固定方法や耐風性について慎重な検討が必要です。
付加断熱
充填断熱に外張り断熱を組み合わせる方法です。
高い断熱性能を実現しやすく、構造材部分の熱橋も抑えられます。ただし、材料費と施工費が増え、壁の厚さや窓まわりの納まりも複雑になります。
宮崎のすべての住宅に付加断熱が必要とは限りません。目標とするUA値や断熱等級、予算から判断しましょう。
断熱材より施工品質が大切?
断熱材の種類と施工品質の両方が大切ですが、性能の高い断熱材でも施工が悪ければ効果を十分に発揮できません。
注意したい施工不良には、次のようなものがあります。
- 断熱材が入っていない部分がある
- 配管や配線まわりに隙間がある
- 断熱材がつぶれている
- 吹付厚さが不足している
- ボードの継ぎ目が開いている
- 気密層が途中で切れている
- 防湿層が破れている
- 天井と壁の取り合いに隙間がある
- 工事途中で断熱材が雨にぬれている
完成後は壁の中が見えなくなります。
そのため、施工中に写真を撮り、厚さ、隙間、防湿層、貫通部などを確認することが重要です。
気密性能は断熱材だけでは決まらない
吹付ウレタンは気密を確保しやすい、グラスウールは気密が取りにくい、と説明されることがあります。
しかし、住宅の気密性能は断熱材だけで決まりません。
- 気密シート
- 構造用面材
- 床と壁の接合部
- 窓まわり
- 配管・配線の貫通部
- コンセント
- 天井点検口
- 玄関ドア
など、建物全体の施工によって決まります。
どの断熱材を採用する場合でも、完成時の見た目だけで気密性は確認できません。
デザインハウス宮崎では、全棟で気密測定を行い、実際のC値で施工状態を確認することが大切だと考えています。
断熱等級だけで判断してよい?
断熱等級は重要な基準ですが、同じ等級でも住み心地が同じになるとは限りません。
断熱等級やUA値は、住宅全体から逃げる熱量を平均的に表したものです。
そのため、
- 窓際の表面温度
- 部屋ごとの温度差
- 夏の日射熱
- 西日の影響
- 断熱材の施工状態
- 気密性能
- 換気設備
- エアコンの配置
までは、UA値だけでは分かりません。
宮崎では、断熱等級6を一つの目安としながら、窓、日射、気密、換気、冷暖房まで一体で計画することが重要です。
価格だけで断熱材を選ばない
断熱材の価格を比較するときは、材料単価だけで判断しないようにしましょう。
確認したいのは、次の内容を含めた総額です。
- 断熱材本体
- 必要な施工厚さ
- 施工費
- 防湿・気密部材
- 外張り部分の固定部材
- 防蟻対策
- 気密測定
- 施工検査
- 将来の冷暖房費
- 補修のしやすさ
高価な断熱材が必ず最良とは限らず、安価な断熱材が必ず低性能とも限りません。
必要な性能を、確実な施工で、無理のない費用で実現できる組み合わせを選ぶことが大切です。
住宅会社へ確認してほしいこと
契約前に、次の内容を確認しましょう。
- 使用する断熱材の商品名と種類
- 熱伝導率はいくつか
- 屋根・壁・床の施工厚さ
- 部位ごとの熱抵抗値
- 住宅全体のUA値
- 目標とする断熱等級
- 防湿層と気密層をどこに設けるか
- 壁の中の結露を検討しているか
- 夏型結露への考え方
- 断熱施工を誰が検査するか
- 施工中の写真を受け取れるか
- 吹付断熱なら厚さを測定するか
- 気密測定を全棟で行うか
- C値の目標と実測結果
- 雨にぬれた場合の対応
- シロアリ対策と点検方法
「高性能な断熱材を使っています」という説明だけでは不十分です。
材料、厚さ、数値、壁の構成、施工方法、検査方法まで確認しましょう。
私たちが考える宮崎の断熱材選び
断熱材は、家の性能を支える大切な材料です。
しかし、商品名やイメージだけで優劣を決めることはできません。
グラスウールでも、適切な厚さで隙間なく施工し、防湿・気密を確保すれば高性能な住宅をつくれます。
吹付ウレタンでも、厚さが不足し、検査が行われなければ本来の性能を発揮できません。
高価なボード系断熱材でも、継ぎ目や窓まわりに隙間があれば性能は低下します。
株式会社ツチモチとデザインハウス宮崎が大切にしているのは、
- 目標とする断熱等級とUA値を決める
- 宮崎の高温多湿に合わせて壁を設計する
- 屋根・壁・床・窓を一体で考える
- 断熱材を隙間なく施工する
- 防湿・気密・通気を連続させる
- 施工中に検査と写真記録を行う
- 全棟気密測定でC値を確認する
ことです。
北海道で学んだ断熱の知恵を、宮崎の強い日差し、湿度、台風、シロアリなどの地域条件に合わせて生かす。
「どの断熱材が一番か」ではなく、「その断熱材を使って、どの性能を、どのように実現するか」。
それが、私たちの考える宮崎型高性能住宅の断熱材選びです。








