結論
高齢者や車いす利用者には、一般的に「引き戸」の方が使いやすい傾向があります。
引き戸は、扉を開けるために身体を前後へ移動する必要が少なく、開けたままにもできます。転倒時に人が扉をふさぎにくいため、トイレ・浴室・寝室には特におすすめです。
ただし、気密性、防音性、台風対策などは開き戸が優れる場合があります。すべてを引き戸にするのではなく、場所ごとに使い分けましょう。
引き戸と開き戸の比較
| 比較項目 | 引き戸 | 開き戸 |
|---|---|---|
| 開閉時の身体移動 | 少ない | 前後へ移動が必要 |
| 車いすでの操作 | 比較的しやすい | 扉を避けながら操作する必要がある |
| 開閉スペース | 小さい | 扉が動くスペースが必要 |
| 緊急時の救助 | 対応しやすい | 内開きは人が倒れると開かない場合がある |
| 開けたままの使用 | しやすい | 風などで動く可能性がある |
| 気密・防音 | やや劣る傾向 | 確保しやすい |
| 鍵・防犯性 | 製品による | 確保しやすい |
| 壁の使用 | 引込み部分が必要 | 壁面を使いやすい |
| 掃除・メンテナンス | レールの清掃が必要 | 比較的簡単 |
| 費用 | やや高くなる場合がある | 標準仕様になりやすい |
トイレは引き戸がおすすめ
トイレ内で倒れた場合、内開き戸は身体が扉をふさぎ、外から開けられなくなる可能性があります。
おすすめする順番は次のとおりです。
- 引き戸
- 外開き戸
- 緊急時に外せる折れ戸
- 内開き戸
トイレの引き戸には、次の条件を確認しましょう。
- 有効開口幅80cm以上
- 軽い力で開閉できる
- 大型の引き手が付いている
- 外から解錠できる
- ゆっくり閉まる機能がある
- 床に大きなレール段差がない
車いすから便器へ移乗する場合は、扉を開けた状態で移乗スペースをふさがないことも重要です。
浴室は引き戸か折れ戸
浴室も、緊急時に外から開けられる扉がおすすめです。
引き戸
- 開口幅を確保しやすい
- 介助者が出入りしやすい
- 車いすやシャワーキャリーで利用しやすい
- 扉を開けても洗い場をふさぎにくい
折れ戸
- 引き戸を引き込む壁がなくても設置できる
- 一般的なユニットバスで採用しやすい
- 緊急時に外せる製品がある
折れ戸は、開口幅が狭くなったり、操作時に指を挟んだりすることがあります。将来介助を想定するなら、可能な範囲で引き戸を優先するとよいでしょう。
浴室の内開き戸は、浴室内で転倒した人が扉をふさぐ可能性があるため避けたい配置です。
寝室は引き戸が便利
寝室の引き戸には次のメリットがあります。
- 夜間に軽い力で開けられる
- 開けたままでも通路をふさがない
- 車いすで出入りしやすい
- 介護ベッドの搬入がしやすい
- 開き戸とベッドが干渉しない
一方で、引き戸は音や光が漏れやすい傾向があります。寝室とLDKが近い場合は、気密性の高い引き戸や、短い廊下・収納を挟む方法を検討しましょう。
廊下に面する部屋も引き戸が安全
狭い廊下へ開き戸が飛び出すと、通行中の家族とぶつかることがあります。
特に次の部屋は引き戸が向いています。
- トイレ
- 洗面脱衣室
- 主寝室
- ウォークインクローゼット
- 廊下に面する収納
引き戸を設けられない場合は、部屋の内側へ開く方向や、廊下の通行を妨げない位置を検討します。ただし、トイレ・浴室の内開きは緊急救助の面で注意が必要です。
玄関は一概に引き戸がよいとは限りません
玄関引き戸は、開閉時に身体を大きく動かさずに済み、車いすでも使いやすいというメリットがあります。
一方、宮崎県では台風による強風・横殴りの雨も考える必要があります。玄関では次の性能を比較しましょう。
- 耐風圧性能
- 水密性
- 気密性
- 断熱性能
- 鍵の操作性
- 開閉の重さ
- 網戸の有無
- 庇の深さ
性能の低い引き戸は、すきま風や雨水の侵入が起こりやすい場合があります。高断熱・高気密仕様の玄関引き戸を選ぶか、風雨を受けにくい位置へ配置しましょう。
開き戸を選ぶ場合は、車いすが扉の前で待機しながら開閉できる水平スペースを確保します。
引き戸にも種類があります
片引き戸
壁に沿って1枚の扉を動かす一般的な方式です。操作しやすく、シニア住宅に向いています。
引込み戸
扉が壁の中へ収まり、開口部を広く使えます。ただし、壁内部の清掃や戸車の交換が難しくなる場合があります。
アウトセット引き戸
壁の外側にレールを設ける方式です。既存住宅のリフォームにも採用しやすく、壁内部へ扉を収納しないためメンテナンスしやすい方式です。
ただし、扉が動く壁面には、スイッチ、コンセント、家具、手すりを設置しにくくなります。
3枚引き戸
広い開口を確保しやすく、介護ベッドや車いすの移動に便利です。寝室やLDKとの間仕切りに適しています。
高齢者向け引き戸の選び方
- 有効開口幅80cm以上
- 弱い力で動かせる
- 床のレール段差が少ない
- 指を掛けやすい大型引き手
- ソフトクローズ機能
- 指挟み防止機能
- 外から解錠できる錠
- 車いすの高さでも操作しやすい
- 戸車を交換・調整しやすい
丸い埋込み引き手は、指先の力が弱くなると使いにくいことがあります。手のひらや複数の指で操作できる大型の引き手がおすすめです。
引き戸の注意点
床レール
床レールに段差や溝があると、つまずきや車いすの通行を妨げることがあります。上吊り式や段差の小さいレールを検討しましょう。
開閉の重さ
大型の引き戸や気密性の高い引き戸は、重く感じることがあります。ショールームで実際に操作して確認してください。
指挟み
勢いよく閉まる引き戸は、指を挟む危険があります。ソフトクローズ機能が有効です。
壁との干渉
引き戸が動く壁には、手すり、コンセント、照明スイッチ、家具を設置できない場合があります。将来の手すり位置と合わせて設計する必要があります。
開き戸が向いている場所
次の場所では、開き戸が適する場合があります。
- 防音性を重視する書斎
- 臭いや音を抑えたい部屋
- 引き戸を引き込む壁がない場所
- 高い気密・断熱性能が必要な玄関
- 収納量を優先したい壁面
- 防火上、指定された扉が必要な場所
開き戸を採用する場合は、レバーハンドル、軽い開閉力、ゆっくり閉まる機能を選びます。握って回す丸ノブは、握力が弱くなると操作しにくいため避けた方がよいでしょう。
シニア向け平屋3LDKでの使い分け
| 場所 | おすすめ |
|---|---|
| 主寝室 | 引き戸 |
| トイレ | 引き戸または外開き戸 |
| 浴室 | 引き戸または緊急時に外せる折れ戸 |
| 洗面脱衣室 | 引き戸 |
| 廊下収納 | 引き戸または折れ戸 |
| 個室 | 引き戸を優先 |
| LDK | 引き戸または扉なし |
| 玄関 | 性能の高い引き戸、または開き戸を個別判断 |
国土交通省の高齢期の住まいに関するガイドラインでも、主要動線の出入口を引き戸などへ変更し、通行幅を確保する方法が示されています。国土交通省「高齢期の住まいの改修ガイドライン」
まとめ
高齢者には、少ない身体移動で開閉でき、車いすでも扱いやすい引き戸が基本的に向いています。特にトイレ、浴室、洗面脱衣室、主寝室は引き戸がおすすめです。
ただし、玄関は宮崎の台風・横殴りの雨を考慮し、耐風圧・水密・断熱性能で選ぶ必要があります。扉の種類だけでなく、有効開口幅80cm以上、開閉の軽さ、段差、引き手、緊急解錠まで確認しましょう。








