A. 認知症と診断されただけで、必ず成年後見人が必要になるわけではありません。
判断の基準は病名ではなく、契約時点でご本人が次の内容を理解し、自分の意思で判断できるかどうかです。
- なぜ建て替えるのか
- どのような家を建てるのか
- 建築費はいくらか
- 誰が代金を支払うのか
- 住宅ローンや抵当権とは何か
- 自宅を解体すると元に戻せないこと
- 契約をするとどのような義務が生じるか
これらを理解して意思表示できる場合は、ご本人が契約できる可能性があります。一方、内容を理解できない状態で署名した契約は、後から無効と判断されるおそれがあります。
成年後見人が必要になるかの目安
| ご本人の状態 | 一般的な対応 |
|---|---|
| 契約内容と金額を十分理解できる | 本人による契約を検討できる |
| 説明を受ければ、おおむね理解できる | 補助・保佐の利用や専門家立会いを検討 |
| 契約内容を理解・判断することが難しい | 成年後見制度が必要になる可能性が高い |
| 日によって判断力が大きく変わる | 契約を急がず、医師・司法書士等に相談 |
| 意思表示がほとんどできない | 本人契約は困難。後見開始を検討 |
成年後見制度には、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」があります。家庭裁判所が医師の診断書などを基に、ご本人に必要な支援を判断します。裁判所「成年後見制度の概要」
家族が代わりに署名すればよいですか?
配偶者やお子様であっても、当然に本人の代理人になれるわけではありません。
ご本人の判断能力が不十分な状態で、家族が本人名義の契約書へ代筆したり、実印を押したりすることは避けてください。「本人も以前から建替えを希望していた」という事情があっても、法律上の代理権がなければ本人を拘束する契約はできません。
また、ご本人が契約内容を理解できない状態になってから、新たに委任状を書いてもらう方法にも問題があります。委任状を作成すること自体に判断能力が必要だからです。
建替え契約の名義が自分だけなら問題ありませんか?
建築主と資金負担者が認知症ではない配偶者だけであっても、次のいずれかに該当すると、ご本人の権利が関係します。
- 土地がご本人名義
- 既存建物がご本人名義
- 土地・建物が夫婦共有名義
- ご本人の預貯金を建築費に使う
- ご本人の不動産へ抵当権を設定する
- ご本人が住宅ローンの連帯債務者・保証人になる
反対に、土地・既存建物がすべて契約者本人の単独名義で、ご本人のお金や担保を使わない場合は、配偶者の成年後見手続を経ずに進められる可能性があります。
ただし、ご本人の生活環境を大きく変えるため、介護・医療面から本人の意思や生活上の利益を十分に確認することが大切です。
成年後見人が選任されれば、すぐ解体できますか?
成年後見人が選任されても、自由に本人の自宅を解体できるわけではありません。
成年被後見人が所有する居住用不動産について、次の行為を行う場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
- 自宅の売却
- 建物の取り壊し
- 抵当権の設定
- 賃貸借契約の締結・解除
- 使用貸借などによる土地利用
現在住んでいる家だけでなく、入院・施設入所前に住んでいた家や、将来戻る可能性がある家も対象になる場合があります。
家庭裁判所の許可を得ずに成年後見人が行った居住用不動産の処分は、無効になります。裁判所「成年被後見人等の居住用不動産の処分許可」
つまり、一般的には次の二段階になります。
- 家庭裁判所へ成年後見等の開始を申し立てる
- 後見人等の選任後、居住用不動産の処分許可を申し立てる
家庭裁判所は建替えを必ず許可しますか?
後見人の役割は、家族全体ではなく、認知症のご本人の財産と生活を守ることです。
そのため、建替えについて次の点が審査されます。
- 建替えが本人の生活に必要か
- 本人が新居に住み続けられるか
- バリアフリー化によって本人の利益になるか
- 建築費が本人の資産に対して過大ではないか
- 老後の生活費・介護費を十分残せるか
- 解体以外に修繕やリフォームの選択肢がないか
- 本人の不動産を家族のローン担保にする計画ではないか
- 本人の過去の希望や現在の意思に沿っているか
例えば、本人の預貯金の大部分を使って、将来お子様が取得する家を建てる計画は、本人の利益にならないと判断される可能性があります。
一方、老朽化や耐震性に問題があり、ご本人が安全に暮らすためのコンパクトなバリアフリー住宅へ建て替える計画は、必要性を説明しやすくなります。ただし、許可が保証されるわけではありません。
配偶者が成年後見人になれますか?
申立時に配偶者を候補者として希望することはできますが、必ず選任されるとは限りません。財産額、家族関係、建替え計画、利益相反の有無などにより、司法書士・弁護士などの専門職が選任される場合があります。
例えば、次のような計画では、ご本人と配偶者の利益が対立する可能性があります。
- 本人の土地に配偶者名義の家を建てる
- 本人のお金で配偶者名義の建物を建てる
- 配偶者のローンのために本人の土地を担保提供する
- 夫婦間で土地や建物の持分を移す
配偶者が成年後見人に選ばれていても、このような利益相反行為では、後見監督人または家庭裁判所が選任する特別代理人による対応が必要になる場合があります。
成年後見制度は建替えが終われば終了しますか?
原則として、建替え契約が終わっただけでは終了しません。
いったん法定後見が始まると、ご本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで続くのが基本です。建替えという目的を達成した後も、財産管理や家庭裁判所への定期報告が必要になり、専門職後見人には本人の財産から報酬が支払われることがあります。
申立て後の取下げにも家庭裁判所の許可が必要です。そのため、「建替え契約をするためだけ」と安易に申し立てず、制度利用後の生活まで確認しましょう。
任意後見契約や家族信託があれば利用できますか?
判断能力が十分な時期に任意後見契約を結んでいた場合は、その内容を確認します。任意後見は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後に効力が生じます。
家族信託を設定している場合も、信託契約に建替え、解体、借入れ、担保設定などの権限が含まれているか確認が必要です。
すでに判断能力が失われている場合、新たに任意後見契約や家族信託を締結することは難しく、法定後見を検討することになります。
宮崎県での安全な進め方
建替え契約を急ぐ前に、次の順番で確認しましょう。
- 土地・建物の登記名義と持分を確認する
- 建替え契約、解体、ローンに誰の同意が必要か整理する
- 主治医に現在の判断能力について相談する
- 地域包括支援センターや司法書士へ相談する
- 必要に応じて宮崎家庭裁判所へ成年後見等を申し立てる
- 本人の居住用不動産なら、処分許可を取得する
- 許可・融資・仮住まい計画が整ってから解体する
建替えの必要性を説明するため、次の資料も用意しておくとよいでしょう。
- 現在の家の耐震診断・劣化状況
- 修繕案と建替え案の比較
- 建築見積書・契約書案
- 新居のバリアフリー計画
- 本人の預貯金と年金収入
- 建替え後の生活費・介護費の資金計画
- 本人が過去に示していた希望
まとめ
認知症の診断だけで、直ちに成年後見人が必要になるわけではありません。ご本人が建替えの内容と結果を理解し、自分で判断できるなら、本人契約が可能な場合があります。
一方、ご本人の判断能力が不足しており、ご本人名義の土地・建物・預貯金・担保が関係する場合は、成年後見・保佐・補助の利用を検討します。さらに、居住用建物の解体や抵当権設定には、後見人を立てるだけでなく、家庭裁判所の事前許可が必要です。
特にシニアの建替えでは、本人の老後資金と介護費を残せる計画であることが重要です。成年後見の申立てや解体を先行させず、登記名義・判断能力・資金計画を同時に確認しましょう。








