「平屋にすれば、老後も安心ですよね?」
家づくりのご相談で、よく聞く言葉です。
確かに平屋は階段を使わずワンフロアで生活できるため、将来を考えた住まいとして大きなメリットがあります。
でも、
「平屋=車いすでも暮らしやすい家」ではありません。
廊下が狭い。
ドアを開けても十分な幅がない。
廊下の曲がり角を車いすで曲がれない。
トイレの中で方向転換できない。
玄関に大きな段差がある。
こうした間取りでは、せっかく平屋にしても、将来使いにくくなる可能性があります。
今回は、10年後・20年後まで考えた家づくりとして、車いすでも移動しやすい間取りの5つのポイントをご紹介します。
まず知ってほしい「廊下幅○cm」の落とし穴
「廊下は80cmあるから、車いすでも大丈夫ですよね?」
ここで注意したいのが、
図面上の寸法ではなく「実際に通れる有効幅」を見ること。
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」では、日常生活空間内の通路について、基本レベルで有効幅員780mm以上(柱等の箇所は750mm以上)、推奨レベルでは**850mm以上(柱等の箇所は800mm以上)**が示されています。国土交通省
さらに、国土交通省の障害者の居住にも対応した住宅設計ハンドブックでも、基本レベルの通路有効幅員を780mm以上としています。国土交通省
ここで重要なのが**「有効幅員」**です。
壁の中心から中心までの寸法ではありません。
仕上がった状態で、実際に車いすが通れる幅を確認します。
だから図面を見るときには、
「この廊下は何cmですか?」
だけではなく、
「完成したときの有効幅は何cmですか?」
と住宅会社に聞いてみてください。
① 廊下|「通れる」と「使いやすい」は違う
車いすがギリギリ通れる幅と、毎日無理なく移動できる幅は同じではありません。
特に介助する人が横や後ろにつく場合、状況は変わります。
国土交通省の指針でも、介助用車いすの利用を想定した推奨レベルとして、日常生活空間内の通路に有効850mm以上が示されています。国土交通省
もちろん、すべての住宅で一律に850mm以上にすればよい、という話ではありません。
家の大きさや家族構成、将来想定する暮らし方によって設計は変わります。
特にコンパクトな平屋では、廊下を広げすぎれば、その分LDKや収納が小さくなることもあります。
だからこそ、
必要な生活動線をできるだけ短くして、必要な場所に幅を確保する。
という設計が重要です。
② ドア|廊下が広くても「入口」で通れないことがある
ここは意外と見落とされます。
廊下は十分広い。
ところが寝室に入ろうとすると、
「あれ?ドアが狭い……」
となることがあります。
国土交通省の高齢者住宅の設計指針では、基本レベルとして日常生活空間内の出入口について750mm以上(浴室は600mm以上)、推奨レベルでは800mm以上の有効幅員が示されています。国土交通省
また、より車いす利用を具体的に想定した国交省の住宅設計ハンドブックでは、基本レベルとして出入口の有効幅員を780mm以上、トイレ・浴室は700mm以上としています。国土交通省
ここでも大切なのは、
「ドア本体の幅」ではなく「実際に通れる有効開口」
です。
引き戸の場合は、扉が残る「引き残し」などを除いた実際の開口幅を確認します。国土交通省
将来を考えるなら「引き戸」も検討
車いすで開き戸を開けようとすると、一度後ろに下がってドアを手前に引く必要が生じる場合があります。
その点、引き戸なら前後の移動を少なくして開閉しやすい場合があります。
また、年齢を重ねて歩行器や杖を使うようになったときにも、開閉動作をしやすくできる可能性があります。
だから寝室・トイレ・洗面室などは、
「開き戸でいい?」
「引き戸にできない?」
という視点でも考えてみてください。
③ 曲がり角|「廊下幅はOK」なのに曲がれない!?
実は車いすの間取りで、とても重要なのが曲がり角です。
直線なら通れる廊下でも、90度曲がる場所では車いすを旋回させるためのスペースが必要になります。
国土交通省の住宅設計ハンドブックでは、直角に曲がる通路について、一方が有効800mm以上の場合、もう一方を850mm以上とする基本レベルが示されています。国土交通省
つまり、
「廊下の幅だけ測ればOK」ではありません。
例えば、
廊下から寝室。
廊下からトイレ。
廊下から洗面脱衣室。
玄関から廊下。
こうした方向転換する場所を図面上で確認する必要があります。
特にトイレの入口が廊下に対して直角になっている間取りは、入口の有効幅と廊下幅の組み合わせを確認しておきたいところです。
④ 寝室・トイレ・浴室|「そこまで行ける」だけでは足りない
車いすで寝室まで行けた。
トイレまで行けた。
それだけでは十分とは限りません。
重要なのは、
その場所で必要な動作ができるか。
です。
例えばトイレなら、
車いすで入る。
ドアを閉める。
便器へ移乗する。
必要なら介助者が入る。
方向転換する。
そして退出する。
という一連の動作があります。
寝室でも同じです。
ベッドの横まで車いすで行けるか。
ベッドへ移乗できるスペースがあるか。
介助する人が立てるか。
家具を置いた後も通れるか。
図面上で部屋が6帖あるから安心、ではありません。
家具を置いた「残りのスペース」で考えること
が重要です。
⑤ 玄関|家の中だけバリアフリーでも不十分
もう一つ忘れてはいけないのが玄関です。
室内を完璧に計画しても、
駐車場から玄関まで段差がある。
玄関ポーチに大きな段差がある。
玄関ドアが狭い。
上がり框を越えられない。
となれば、車いすでの生活は難しくなります。
国土交通省の指針でも、一戸建て住宅の屋外アプローチについて、歩行や車いす利用に配慮した形状・寸法とすることが示されています。国土交通省
だから将来を考えるなら、
駐車場 → 玄関 → LDK → 寝室 → トイレ → 洗面 → 浴室
までを一本の生活動線として考えてみてください。
「将来必要になったらリフォーム」でもいい?
もちろん、将来必要になってから手すりを付けたり、設備を交換したりする方法もあります。
すべてを新築時から介護仕様にする必要はありません。
むしろ私たちがおすすめしたいのは、
「今は普通に暮らしやすく、将来は少ない工事で対応できる家」
という考え方です。
例えば、
将来手すりを設置しやすいようにする。
廊下や入口の有効幅を確保しておく。
寝室とトイレを近くする。
開き戸を引き戸に変更しやすくしておく。
玄関のアプローチを将来変更できるようにする。
1階だけで生活が完結できるようにする。
こうした準備なら、現在の暮らしを犠牲にせず取り入れられることがあります。
宮崎で平屋を建てるなら「老後までワンフロア」を考える
宮崎でも平屋を希望される方は多くいらっしゃいます。
でも、私たちが考える平屋の魅力は、
「おしゃれだから」だけではありません。
階段を使わず生活できることは、10年後、20年後を考えたとき、大きなメリットになる可能性があります。
特に50代・60代からの建て替えなら、
「今、歩けるから大丈夫」
ではなく、
「80歳になった自分が、この家で生活できる?」
という視点から図面を見てみてください。
コンパクトな平屋こそ「廊下を増やさない」という考え方も
ここで少し面白いポイントがあります。
「車いすのために廊下を全部広くしよう」
と考えるだけが正解ではありません。
25坪程度のコンパクトな平屋なら、
そもそも長い廊下をつくらない
という設計もできます。
LDKを住まいの中心にして、
寝室。
トイレ。
洗面。
浴室。
収納。
への移動距離を短くする。
そうすれば床面積を大きく増やさなくても、将来の移動負担を抑えられる可能性があります。
これは、デザインハウス宮崎がコンパクト住宅で大切にしている考え方でもあります。
将来を考えた間取り「7つのチェック」
図面ができたら、ぜひ確認してみてください。
- 廊下の有効幅は十分か
- ドアの有効開口幅は十分か
- 車いすで90度曲がれるか
- 寝室からトイレまで近いか
- トイレや洗面で必要な動作スペースがあるか
- 駐車場から玄関まで段差に対応できるか
- 家具を置いた後でも移動できるか
そして、もう一つ。
「介助する人が一緒に動けるか?」
まで考えておくと、より現実的な間取りになります。
まとめ|平屋にするだけでは「老後に住みやすい家」にはなりません
平屋だから安心。
廊下が広いから安心。
バリアフリーだから安心。
それだけで判断するのではなく、
「実際に車いすで生活するとしたら、この間取りをどう移動する?」
というところまで考えてみましょう。
国土交通省の指針では、高齢者住宅の日常生活空間について、通路の有効幅員は基本レベル780mm以上、推奨レベル850mm以上などの目安が示されています。国土交通省
でも、数字だけでは住みやすさは決まりません。
ドア。
曲がり角。
家具。
トイレ。
寝室。
玄関。
駐車場。
これらを一つの生活動線として設計することが大切です。
デザインハウス宮崎では、
「今、住みやすい家」だけではなく、「10年後・20年後も住み続けやすい家」
という視点から間取りをご提案しています。
特に50代・60代からの建て替えでは、
「この廊下、将来車いすでも通れる?」
「寝室とトイレの位置はこれで大丈夫?」
「25坪の平屋でも老後に暮らしやすくできる?」
そんなところから、一緒に図面を考えてみませんか?
よくある質問
Q.車いすなら廊下幅は何cm必要ですか?
国土交通省の高齢者住宅の指針では、日常生活空間内の通路について基本レベルで有効780mm以上、推奨レベルで850mm以上が示されています。ただし、車いすの種類、介助の有無、曲がり角などによって必要な空間は変わります。国土交通省
Q.廊下が85cmあれば必ず大丈夫ですか?
必ずとは言えません。ドアの有効開口、曲がり角、家具、介助スペースなども含めて確認する必要があります。
Q.車いすを考えるなら引き戸の方がいいですか?
引き戸は開閉時の前後移動を少なくしやすいため、有効な選択肢です。ただし、引き込みスペースや有効開口幅も確認しましょう。
Q.50代で建て替えるなら、最初から完全な介護住宅にすべきですか?
必ずしも必要ありません。現在の暮らしやすさを確保しながら、将来手すりを付ける、建具を変更するなど、必要になったときに対応しやすい設計にしておく方法があります。









