結論
上がり框の代わりにスロープを設けることは可能ですが、短く急なスロープは、歩行するシニアにとって段差より危険になることがあります。
安全性を高める基本は、次の組み合わせです。
- 上がり框を5~10cm程度に低くする
- 広く安定した式台を設ける
- 縦・横手すりを付ける
- 靴を脱ぎ履きできるベンチを置く
- 車いすが必要なら、十分な長さの固定スロープを別に設ける
「完全に段差をなくすこと」より、本人の歩行状態に合った昇降方法を選ぶことが重要です。
玄関段差を解消する主な方法
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 上がり框を低くする | 自立歩行できる人 | 新築時に計画しやすい |
| 式台を置く | 脚を高く上げにくい人 | 動かないよう固定する |
| 手すりを付ける | 立ち上がりが不安な人 | 利き手・動作に合わせる |
| 腰掛けベンチを設ける | 靴の脱ぎ履きが難しい人 | 立ち上がり用手すりも有効 |
| 固定スロープ | 車いす・歩行器利用者 | 十分な長さと水平部分が必要 |
| 可搬式スロープ | 一時的な車いす利用 | 使用時の設置・固定が必要 |
| 段差解消機 | 高低差が大きい場合 | 電源、点検、停電対策が必要 |
| 別の出入口をバリアフリー化 | 玄関が狭い住宅 | 勝手口・掃き出し窓も検討 |
短いスロープが危険な理由
スロープは短くすると勾配が急になります。歩行する人は下りるときに前方へ重心が移り、転倒しやすくなります。
車いすでも、後方転倒や介助者が支えきれない危険があります。
国土交通省の基準では、傾斜路の勾配は原則として1/12以下が一つの目安です。国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計基準」
必要なスロープの長さ
| 段差の高さ | 1/12勾配に必要な長さ |
|---|---|
| 5cm | 約60cm |
| 10cm | 約1.2m |
| 15cm | 約1.8m |
| 20cm | 約2.4m |
| 30cm | 約3.6m |
さらに、スロープの前後には車いすが止まれる水平部分が必要です。
例えば、15cmの上がり框に長さ50cmの簡易スロープを置くと、非常に急な傾斜になります。毎日歩いて使用する方法としてはおすすめできません。
歩けるシニアには式台の方が安全な場合もある
杖や手すりを使えば歩ける人の場合、急なスロープよりも、低い段差を2段に分けた方が安定することがあります。
安全な式台の条件
- 奥行きが十分にある
- 足全体を載せられる
- 床に固定されている
- 表面が滑りにくい
- 周囲と色の差があり、段差を見分けやすい
- 昇降位置に手すりがある
- 靴や荷物が通路をふさがない
置くだけの木箱や軽い踏み台は、乗ったときに動いたり傾いたりするため危険です。
おすすめのシニア向け玄関
新築・建替えの場合は、次のような構成が使いやすいでしょう。
- 上がり框:できるだけ低くする
- 玄関土間:歩行器を置ける広さ
- ベンチ:座って靴を脱ぎ履きできる
- 手すり:ベンチから立ち上がれる位置
- 玄関扉:引き戸または軽い開き戸
- 通路幅:車いすでも通りやすくする
- 収納:床に靴や荷物を置かずに済む
- 照明:人感センサー付き
- 床材:濡れても滑りにくいもの
玄関のすべてをスロープにするより、「普段使う低い段差」と「将来使える車いす経路」を分ける方法もあります。
車いすを想定する場合
車いす利用を考えるなら、玄関内部の上がり框だけでなく、道路や駐車場から室内までを一つの経路として計画します。
- 駐車場から玄関まで段差がない
- 雨にぬれにくい
- スロープの幅が十分ある
- 前後に水平な待機スペースがある
- 玄関扉を開けても車いすが傾斜上に残らない
- 扉下のレールが大きな段差にならない
- 室内廊下まで連続して移動できる
敷地に長いスロープを設けられない場合は、L字型スロープ、折り返し型スロープ、段差解消機、掃き出し窓からの出入りなどを比較します。
簡易スロープを使用する場合の安全確認
置くだけのスロープを使う場合は、次の項目を確認してください。
- 段差の高さに適合した製品か
- 耐荷重を超えていないか
- 上端が段差に確実に掛かっているか
- 横ずれ・浮き上がりがないか
- 表面に滑り止めがあるか
- 車いすの幅に適合しているか
- 前後に水平スペースがあるか
- 斜め方向から進入しないか
- 使用後に通路へ放置しないか
- 介助者が安全に操作できるか
板や合板を立て掛けてスロープ代わりにするのは危険です。福祉用具専門相談員に、本人の身体状況と玄関寸法を確認してもらいましょう。
宮崎県では雨と台風への対策も必要
宮崎の玄関スロープでは、雨にぬれたときの滑りやすさが大きな問題になります。
- 玄関庇を深くする
- 雨が吹き込みにくい向きにする
- 滑りにくい床材を選ぶ
- 水がたまらない排水勾配にする
- 手すりを両側または必要な側に設ける
- 可搬式スロープを台風時に屋外へ放置しない
- 夜間用の足元照明を付ける
表面が滑りにくくても、落ち葉、砂、コケがあると危険です。掃除しやすい仕上げも重要です。
介護保険は利用できますか?
要介護・要支援認定を受けている場合、既存住宅の段差解消工事が介護保険の住宅改修費の対象になる可能性があります。
工事を伴わないスロープは福祉用具貸与、工事で固定するスロープは住宅改修として扱われる場合があります。2024年4月からは、一部の固定用スロープについて貸与と購入を選択できる制度も導入されています。厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
ただし、新築工事そのものは原則として介護保険の住宅改修費の対象外です。既存住宅を改修する場合も、必ず工事・購入前にケアマネジャーと自治体へ申請してください。
まとめ
上がり框の代わりにスロープを設けることはできますが、短く急な簡易スロープは安全とはいえません。
自立歩行ができるシニアには、低い上がり框、固定式台、手すり、ベンチの組み合わせが適することがあります。車いす利用を想定する場合は、1/12程度の緩やかな勾配と、前後の水平スペースを確保した固定スロープを検討しましょう。








