「ヒートショックは北海道や東北など、寒い地域だけの問題ではありませんか?」
「温暖な宮崎なら、特別な対策は必要ないのでは?」
このように考える方もいらっしゃいます。
先に結論をお伝えすると、温暖な宮崎でもヒートショック対策は必要です。
大切なのは、屋外の最低気温だけではありません。暖かいリビングと、暖房されていない廊下・トイレ・洗面脱衣室・浴室との「住宅内の温度差」が身体へ負担をかけます。
特に50代・60代からの建て替えでは、段差や手すりだけでなく、家の中の温度差を小さくすることも重要なバリアフリーです。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、身体へ負担がかかる現象を指す一般的な言葉です。
例えば冬の入浴では、次のような温度変化が起こります。
- 暖かいリビングから寒い脱衣室へ移動する
- 衣服を脱いで身体が冷える
- 寒い浴室へ入る
- 熱いお湯につかる
- 浴槽から立ち上がる
寒い場所では血管が収縮して血圧が上がりやすくなり、熱い浴槽では血管が広がって血圧が下がることがあります。
こうした急激な変動は、心臓や血管へ負担をかける可能性があります。
なお、入浴中の事故には、熱中症、意識障害、溺水、持病、飲酒、薬の影響など、複数の要因が関係します。入浴中の事故をすべてヒートショックだけで説明することはできません。
なぜ暖かい宮崎でも注意が必要なの?
宮崎は全国的に見れば温暖ですが、冬の朝晩には気温が下がります。
さらに、温暖地というイメージから、これまで建てられた住宅の中には、断熱・気密性能が十分でない家もあります。
そのような住宅では、リビングだけをエアコンやこたつで暖め、次の場所は冷えたままになりやすくなります。
- 廊下
- 玄関
- 北側のトイレ
- 洗面脱衣室
- 浴室
- 寝室
- 階段
- 使っていない部屋
外が比較的暖かい地域でも、家の中に大きな温度差があれば、身体への負担は生じます。
ヒートショック対策は「寒冷地か温暖地か」ではなく、「住宅内にどれくらい温度差があるか」で考えることが重要です。
リビングだけ暖かくても十分ではない
断熱性能の低い住宅では、暖房しているリビングと、暖房していない水まわりとの温度差が大きくなりがちです。
例えば、リビングは暖かくても、
- 廊下へ出ると急に寒い
- 脱衣室で震えながら服を脱ぐ
- 浴室の床や壁が冷たい
- トイレの便座以外が冷えている
- 夜中に寝室からトイレへ移動すると寒い
という状態では、家の中を移動するたびに身体が温度変化へ対応しなければなりません。
国土交通省も、断熱性を高め、リビングと廊下、トイレ、浴室などの温度差を減らすことを、ヒートショック対策として示しています。国土交通省「高齢者リフォーム・温熱環境への配慮」
特に注意が必要な人
ヒートショックや入浴事故には、特に注意が必要な方がいます。
- 65歳以上の方
- 高血圧の方
- 糖尿病の方
- 心臓や血管に持病がある方
- 不整脈がある方
- 入浴前に飲酒する習慣がある方
- 熱いお湯を好む方
- 長時間入浴する方
- 睡眠薬などを使用している方
- 一番風呂に入ることが多い方
- 一人で入浴することが多い方
持病や服薬がある場合は、入浴方法について主治医へ相談することも大切です。
浴室だけでなくトイレにも注意する
ヒートショック対策というと、浴室暖房を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、冬のトイレも注意したい場所です。
夜中に暖かい布団から出て、寒い廊下を通り、冷えたトイレへ移動すると、急激な温度変化が起こります。
さらに、排便時に強くいきむことで血圧が変化する場合もあります。
住宅を設計するときは、
- 寝室とトイレを近づける
- トイレを外壁に面して冷えやすい場所へ孤立させない
- 廊下を長くしすぎない
- トイレの窓を必要以上に大きくしない
- 高性能な窓を採用する
- 家全体の室温を保ちやすくする
- 必要に応じて小型暖房を設置する
といった工夫が有効です。
家全体の断熱が基本的な対策
ヒートショック対策で重要なのは、リビングと水まわりの温度差を小さくすることです。
そのためには、浴室暖房を追加するだけでなく、住宅全体の断熱性能を高めることが基本になります。
確認したいのは、次の部分です。
- 屋根または天井の断熱
- 外壁の断熱
- 床または基礎の断熱
- 窓の断熱性能
- 玄関ドアの断熱性能
- 浴室・脱衣室まわりの断熱
- 気密性能
- 換気設備
- 暖房計画
国土交通省も、断熱性能を高め、部屋間の温度差を小さくすることで、健康面のメリットが期待できると案内しています。国土交通省「住宅の省エネ・脱炭素について」
窓の性能も重要
浴室、脱衣室、トイレは北側に配置されることが多く、日差しによる暖かさを得にくい場所です。
さらに、窓は断熱材が入った壁より熱が逃げやすいため、大きな窓を付けると室温が下がりやすくなります。
水まわりの窓は、
- 本当に必要か
- どの程度の大きさが必要か
- 換気を窓に頼る必要があるか
- 樹脂サッシを採用できるか
- Low-E複層ガラス以上にできるか
- 内窓を設置できるか
を検討しましょう。
24時間換気や換気扇があれば、浴室やトイレの換気を窓の開閉だけに頼る必要はありません。
明るさや開放感のために大きな窓を付けるより、必要な採光を確保できる小さな高性能窓の方が、温度を保ちやすい場合があります。
浴室暖房があれば安心?
浴室暖房は有効な対策ですが、浴室だけを暖めれば十分とは限りません。
脱衣室が寒いままであれば、衣服を脱ぐ段階で身体が冷えてしまいます。
また、暖房を入れてから短時間で入浴すると、壁、床、天井までは十分に暖まっていないことがあります。
浴室暖房を採用する場合は、
- 脱衣室も暖める
- 入浴前から運転する
- 浴室の扉を開けて暖気を回す方法を検討する
- 浴室の窓を小さくする
- 浴室まわりの断熱を強化する
- 温度計で実際の室温を確認する
ことが大切です。
高断熱住宅なら個別暖房は不要?
高断熱・高気密住宅では、家全体の室温を保ちやすくなります。
しかし、間取りや暖房計画によっては、脱衣室や浴室が十分に暖まらないことがあります。
例えば、
- 脱衣室の扉を閉めている
- 暖房の空気が届かない
- 北側の窓が大きい
- 浴室が断熱区域から外れている
- 換気による空気の流れが適切でない
- 暖房機器の容量や位置が合っていない
場合です。
断熱等級やUA値だけでなく、各部屋の温度がどのようになるかを確認しましょう。
新築時に行いたいヒートショック対策
家全体の断熱性能を高める
デザインハウス宮崎では、断熱等級6を一つの推奨水準として考えています。
ただし、等級だけでなく、窓、気密、換気、暖房計画、施工品質まで確認することが必要です。
気密性能を測定する
断熱材を厚くしても、建物に隙間が多ければ、暖かい空気が逃げてしまいます。
全棟で気密測定を行い、C値によって実際の施工状態を確認することが大切です。
水まわりを生活空間から離しすぎない
長い廊下の先に浴室やトイレがある間取りは、移動中に身体が冷えやすくなります。
リビング、寝室、トイレ、洗面脱衣室の距離を短くすることで、温度差と移動負担を軽減できます。
脱衣室に暖房設備を設ける
壁掛け暖房、エアコン、浴室暖房との連携などを検討します。
持ち運び式の暖房器具は、転倒や火災のリスクにも注意が必要です。建築時に安全な暖房方法を計画しておくと安心です。
浴室と脱衣室の窓を見直す
必要以上に大きな窓を避け、高性能なサッシとガラスを採用します。
窓を設けない選択肢も含め、採光、換気、断熱、防犯、掃除の負担を比較しましょう。
温度を見える化する
リビングだけでなく、脱衣室や浴室にも温度計を設置すると、感覚ではなく数値で温度差を確認できます。
消費者庁も、部屋間の温度差について、温度計を活用して見える化することを勧めています。消費者庁「年末年始、高齢者の事故に注意しましょう」
既存住宅でできる対策
すぐに建て替えや全面改修ができない場合でも、対策は可能です。
窓を断熱する
- 内窓を設置する
- 高断熱な窓へ交換する
- 浴室・脱衣室の窓を小さくする
- 断熱性のある窓用品を補助的に使う
特に内窓は、既存窓を残したまま断熱性能を高めやすい方法です。
脱衣室と浴室を暖める
入浴前に暖房を使用し、脱衣室と浴室の温度差を小さくします。
浴槽へお湯を張る際に浴室を暖める方法もありますが、住宅や設備の状況に合わせ、安全な方法を選びましょう。
生活範囲を部分断熱する
住宅全体の改修が難しい場合は、
- リビング
- 寝室
- トイレ
- 洗面脱衣室
- 浴室
など、日常的に使用する範囲をまとめて断熱する方法があります。
国土交通省も、高齢期の住宅改修において、よく使う生活空間を中心とした部分断熱改修を紹介しています。国土交通省「生活空間の部分断熱改修」
ただし、部分断熱では、改修範囲とそれ以外の場所との境界に新たな温度差や結露リスクが生じる可能性があります。専門家による設計が必要です。
今日からできる入浴時の対策
住宅性能の改善だけでなく、日常の入浴方法も重要です。
消費者庁は、次のような事故防止策を案内しています。
- 入浴前に脱衣室と浴室を暖める
- 温度計で部屋間の温度差を確認する
- 入浴前に水分を取る
- 食後すぐの入浴を避ける
- 飲酒後や医薬品服用後の入浴を避ける
- 家族へ声をかけてから入浴する
- 熱いお湯や長時間の入浴を避ける
- 浴槽から急に立ち上がらない
- 同居家族がときどき様子を確認する
特に高齢者が入浴する場合は、「静かだから大丈夫」と思わず、長時間になっていないか家族が確認することが大切です。
もし浴槽内で意識を失っている人を見つけたら
事故が発生した場合は、できる範囲で次の対応を行います。
- 浴槽の栓を抜く
- 人を呼ぶ
- 顔が湯につからないようにする
- 119番へ通報する
- 指令員の指示に従って救命処置を行う
一人で無理に浴槽から引き上げようとすると、救助する側も転倒する危険があります。まず湯を抜き、助けを呼ぶことが重要です。
ヒートショック対策でよくある誤解
宮崎だから大丈夫
外の気候が温暖でも、断熱性能が低く、家の中に大きな温度差があれば対策が必要です。
若いから関係ない
高齢者ほど注意が必要ですが、若い人でも持病、飲酒、脱水、熱い湯、長時間入浴などが重なると事故の可能性があります。
浴室暖房があれば大丈夫
脱衣室、廊下、寝室、トイレとの温度差も確認する必要があります。
高断熱住宅なら事故は起きない
高断熱化はリスクを抑える対策の一つですが、熱い湯、長時間入浴、飲酒、脱水、持病などへの注意も必要です。
入浴事故はすべてヒートショック
入浴中の事故には、熱中症、溺水、意識障害など複数の原因が関係します。ヒートショックだけに限定せず、総合的に対策することが大切です。
住宅会社へ確認してほしいこと
建て替えや新築を検討するときは、次の内容を確認しましょう。
- 断熱等級はいくつか
- UA値はいくつか
- 気密測定を全棟で行うか
- C値の目標はいくつか
- 脱衣室・浴室・トイレの温度をどう考えているか
- 浴室が断熱区域内に入っているか
- 水まわりの窓はどのような仕様か
- 寝室からトイレまでの距離は短いか
- 家全体へ暖気が届く間取りか
- 脱衣室へ暖房設備を設置できるか
- 換気によって水まわりが冷えすぎないか
- 断熱・気密施工をどのように検査するか
「高性能住宅だから暖かい」という説明だけでなく、冬の脱衣室やトイレがどのような環境になるのか、具体的に確認することが大切です。
私たちが考える宮崎のヒートショック対策
宮崎は温暖な地域ですが、冬の住宅内が自動的に暖かくなるわけではありません。
リビングだけを暖房し、廊下、トイレ、脱衣室、浴室が冷えていれば、家の中に大きな温度差が生まれます。
- 断熱等級6を一つの推奨水準とする
- 高性能な窓を採用する
- 全棟気密測定で施工状態を確認する
- 第一種換気で計画的に空気を入れ替える
- 水まわりを生活空間から離しすぎない
- 浴室・脱衣室・トイレの寒さを抑える
- 夏の暑さと湿度にも対応する
ことを大切にしています。
北海道で学んだ「家全体の温度差を小さくする」という考え方を、宮崎の気候と暮らしに合わせて生かす。
宮崎でも、家の中の寒さを我慢しないことが大切です。温度差を小さくすることは、目に見えないバリアフリーです。
それが、私たちの考える宮崎型高性能住宅のヒートショック対策です。








