株式会社ツチモチが運営する「デザインハウス宮崎」の町田です。
家づくりでは、キッチンやお風呂、床材、壁紙など、目に見えるものに関心が集まりやすいものです。
どれも毎日の暮らしに関わる大切なものですが、家を建てる前に、ぜひ知っていただきたいことがあります。
それは、設備や内装は後から交換しやすくても、断熱・気密・耐震などの住宅性能は、完成後に直すことが難しいということです。
だからこそ、新築時には、デザインや設備だけでなく、家の土台となる性能を優先して考える必要があります。
後から交換できるものと、直しにくいもの
住宅を構成するものには、将来比較的交換しやすいものと、大がかりな工事をしなければ変更できないものがあります。
| 比較的交換しやすいもの | 完成後に直しにくいもの |
|---|---|
| キッチン・洗面台・トイレ | 基礎・構造・耐震性能 |
| 給湯器・エアコン | 壁・床・天井の断熱性能 |
| 照明器具 | 建物全体の気密性能 |
| 壁紙・カーテン | 窓の大きさや配置 |
| 一部の床材 | 防湿・防水・通気の構造 |
| 家具・収納用品 | 建物の形・間取り・階段 |
| 太陽光発電設備 | 軒や庇による日射計画 |
キッチンやトイレは、古くなれば取り外して交換できます。
しかし、壁の中にある断熱材を増やすためには、内壁や外壁を取り外さなければなりません。気密層や構造部分を直す場合も、広い範囲の解体や復旧が必要になります。
完成後にできないわけではありませんが、多くの費用と時間、生活への負担がかかります。
断熱性能を後から高めるのは大工事です
断熱性能は、主に次の部分でつくられています。
- 屋根または天井
- 外壁
- 床または基礎
- 窓と玄関ドア
これらが建物全体を切れ目なく包むことで、外の暑さや寒さの影響を受けにくい家になります。
新築時であれば、壁を仕上げる前に断熱材を施工できます。しかし完成後に壁の断熱材を増やす場合は、壁紙や石こうボード、場合によっては外壁まで取り外さなければなりません。
天井や床の断熱改修も、点検口から簡単に直せるとは限りません。配線や配管、構造材があるため、希望する厚さを確保できないこともあります。
「寒ければ後から断熱材を増やせばよい」と考えていても、実際には簡単ではないのです。
気密性能は、完成後の改善がさらに難しい
気密性能は、住宅全体にある隙間の少なさを表します。
高気密住宅は、気密シートや構造用面材、専用のテープや部材を使い、家全体に連続した気密層をつくります。
特に重要なのが、
- 壁と床の接合部
- 壁と天井の接合部
- 窓や玄関ドアの周囲
- 配管・配線の貫通部分
- コンセントやスイッチの周囲
- 柱や梁が入り組んだ部分
などの処理です。
これらの多くは、完成後には壁や天井の中へ隠れてしまいます。
完成後に気密性能を改善しようとしても、どこから空気が漏れているかを探し、仕上げ材を剥がして一か所ずつ処理しなければなりません。
だからこそ、建築途中で丁寧に施工し、壁を閉じる前に気密測定を行うことが重要です。
窓は交換できても、簡単ではありません
住宅の暑さや寒さに大きく影響するのが窓です。
完成後でも、内窓の設置やガラス交換、窓そのものの交換はできます。しかし、窓全体を交換する場合は、外壁や内壁、防水部分にも工事が及ぶ可能性があります。
また、窓の性能だけでなく、
- 窓の大きさ
- 窓の位置
- 方角
- 西日の入り方
- 軒や庇との関係
- 家具の置き方
- 風の通り道
も、室内の快適性に影響します。
大き過ぎる窓を後から小さくしたり、位置を変えたりする工事は簡単ではありません。
宮崎では、冬の日差しを取り入れながら、夏の強い日差しを遮る設計が大切です。窓はデザインだけでなく、建築前に日射まで考えて決める必要があります。
耐震性能も完成後の変更には制約があります
耐震性能は、基礎、柱、梁、耐力壁、床、接合金物など、住宅全体のバランスによって決まります。
完成後でも耐震補強は可能ですが、壁や床を剥がす工事が必要になる場合があります。
また、窓の位置や間取りによっては、必要な場所に耐力壁を追加できないこともあります。
耐震性能は、地震が起きてから直すものではありません。
建築前に構造計算を行い、間取りと耐震性を同時に検討することが大切です。
間取りも「後で変えればよい」とは限りません
家族構成や暮らし方が変われば、間取りを変更したくなることがあります。
間仕切り壁だけなら比較的変更しやすい場合もありますが、すべての壁を自由に動かせるわけではありません。
- 建物を支える耐力壁
- 柱や梁
- 階段
- 水まわりの配管
- 窓や玄関の位置
- 天井裏や床下の設備
などが関係するためです。
将来の暮らし方まで考え、変更しやすい部分と変更できない部分を整理して設計する必要があります。
設備を優先して性能を下げてしまう危険
家づくりには予算があります。
希望をすべて採用すると予算を超えてしまうため、どこかを調整しなければならないこともあります。
そのときに注意したいのが、見た目や設備を優先し、住宅性能を下げてしまうことです。
例えば、
- キッチンを最上位仕様にするため断熱性能を下げる
- 大きな窓を優先して、窓性能を下げる
- 内装材に予算をかけるため、気密測定を省く
- 建物を大きくするため、耐震や断熱の予算を削る
- 家電や家具を優先して、日射遮蔽を省く
といった選択です。
設備は将来交換できますが、断熱材や構造部分を後から直すには、設備交換よりも大きな費用がかかる可能性があります。
予算を調整するときは、後から変更できるものから見直すことが基本です。
初期費用だけでなく、住み始めてからを考える
住宅性能を高めると、建築時の費用が増える場合があります。
しかし、家の費用は建築費だけではありません。
- 冷暖房費
- 設備の交換費用
- 結露や湿気による補修費用
- 外壁や屋根の維持費
- 将来の断熱改修費用
- 家族の暮らしやすさ
まで含めて考える必要があります。
建築時に少し安くなっても、毎年の冷暖房費が増え、後から大規模な改修が必要になれば、結果的に負担が大きくなることがあります。
「今いくらで建てられるか」だけでなく、「完成後、長い期間にわたってどのような費用がかかるか」を考えることが大切です。
家を小さくして、性能を守るという考え方
予算内に収めるために住宅性能を下げる前に、建物の大きさや間取りを見直す方法があります。
例えば、
- 使用頻度の低い部屋を減らす
- 廊下を短くする
- 収納を一か所に集約する
- 水まわりをまとめる
- 凹凸の少ない建物形状にする
- 必要以上に大きな窓を減らす
といった工夫です。
コンパクトで形の整った住宅は、工事費を抑えやすいだけでなく、断熱・気密施工が安定しやすく、冷暖房する空間も小さくできます。
家の広さを少し整理し、その分を耐震・断熱・気密・耐久性へ配分することは、将来を考えた合理的な選択です。
建築会社に確認してほしいこと
住宅性能について、契約前に次の内容を確認しましょう。
- 断熱等級はいくつか
- UA値はいくつか
- 建築地の地域区分を確認しているか
- 窓と玄関ドアの仕様は何か
- 気密測定を全棟で行うか
- C値の目標を定めているか
- 耐震等級と構造計算の方法は何か
- 断熱・気密施工の検査を行うか
- 完成後に計算書や測定結果を受け取れるか
- 将来のメンテナンス計画があるか
「高性能住宅です」という説明だけでなく、数値、仕様、施工方法、検査方法まで確認することが重要です。
家づくりの優先順位
私は、家づくりの予算を次の順序で考えることをおすすめします。
- 耐震性・構造の安全性
- 防水・防湿・耐久性
- 断熱・気密・窓の性能
- 換気・冷暖房・日射計画
- 将来も使いやすい間取り
- 住宅設備・内装・デザイン
デザインや設備を軽視するという意味ではありません。
完成後に直しにくいものを先に確保し、そのうえで交換できるものを予算内で選ぶという考え方です。
私たちが考える宮崎型高性能住宅
住宅性能は、完成後に直せないわけではありません。
しかし、壁や床、天井を解体する大がかりな工事になり、費用も生活への負担も大きくなります。
だからこそ、新築時に必要な性能をきちんと考え、設計し、丁寧に施工し、検査によって確認することが大切です。
株式会社ツチモチとデザインハウス宮崎が目指すのは、完成した瞬間だけ美しい家ではありません。
北海道で学んだ断熱・気密の知恵を宮崎の気候に生かし、10年後、20年後も快適に暮らせる家をつくることです。
後から交換できるものより、後から直しにくいものを大切にする。
それが、私たちの考える「宮崎型高性能住宅」の家づくりです。








