A. 親名義へ戻すことは可能ですが、原則として「子どもから親への新たな贈与」または「売買」になります。
土地をいったん子どもへ贈与し、建替え後に親へ戻すと、名義を一時的に借りただけという扱いにはなりません。
一般的には、次の2回の財産移転があったものとして扱われます。
- 親から子どもへの土地の贈与
- 子どもから親への土地の贈与
そのため、贈与税、登録免許税、不動産取得税、司法書士費用などが往復で発生する可能性があります。建替え前の段階なら、土地を子どもへ贈与せずに進める方法を先に検討することをおすすめします。
親へ戻す方法は3つあります
| 方法 | 税務上の基本的な扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 子どもから親へ贈与 | 親に贈与税がかかる可能性 | 登録免許税・不動産取得税も必要 |
| 子どもから親へ売却 | 適正価格なら贈与税を回避できる可能性 | 親に購入資金が必要。子に譲渡所得税の可能性 |
| 当初の贈与契約を合意解除 | 条件によって贈与の取消しとして登記 | 当初の贈与税が消えるとは限らない |
1.子どもから親へ贈与する場合
最も分かりやすい方法ですが、税負担が大きくなる可能性があります。
一般的な手続き
- 土地の登記事項証明書を確認する
- 土地の相続税評価額・固定資産税評価額を確認する
- 子どもと親で贈与契約書を作成する
- 抵当権がある場合は金融機関の承諾を得る
- 子どもから親への所有権移転登記を行う
- 親が必要に応じて贈与税を申告・納付する
- 不動産取得税の手続きを確認する
登記申請は、一般的に子どもを登記義務者、親を登記権利者として行います。
贈与税は誰が払いますか?
子どもから土地を受け取る親が、贈与税の納税義務者です。
暦年課税では、1年間に受けた贈与の合計額から110万円を差し引いた残額に贈与税がかかります。国税庁「贈与税がかかる場合」
子どもから親への贈与には、親から18歳以上の子どもへの贈与に用いられる「特例税率」は原則として使えず、一般税率が適用されます。土地の評価額が高いほど、負担が大きくなる可能性があります。
2.子どもから親へ売却する場合
親が子どもから土地を適正な時価で買い戻す方法です。適正な売買であれば、親への贈与税を避けられる可能性があります。
ただし、次の費用・税金を確認する必要があります。
親側
- 土地の購入代金
- 所有権移転登記の登録免許税
- 不動産取得税
- 司法書士費用
- 仲介を依頼した場合の仲介手数料
子ども側
- 売却益が出た場合の譲渡所得税・住民税
- 抵当権抹消費用
- 売買契約書の印紙税
- 必要に応じた測量費
親子間だからと極端に安い価格で売ると、時価と売買価格の差額が親への贈与と判断される可能性があります。
反対に、相場より極端に高い価格で親が買えば、親から子どもへの贈与が含まれると判断されるおそれがあります。不動産鑑定や複数社の査定など、価格の根拠を残しておきましょう。
3.贈与契約を合意解除する場合
親子で当初の贈与契約を解除し、土地を親へ戻す方法も考えられます。
ただし、「解除すれば贈与税もすべてなかったことになる」とは限りません。国税庁の取扱いでは、合意解除をしても、当初の贈与について原則として贈与税が課税されます。
例外的に、次のような条件を満たし、税負担の公平を著しく害すると税務署長が認める場合には、当初の贈与がなかったものとして扱われる可能性があります。
- 贈与した年分の贈与税申告期限までに解除する
- 親名義へ戻したことを登記などで確認できる
- 土地を売却していない
- 抵当権などの担保を設定していない
- 差押えなどを受けていない
- 贈与税を免れるための意図的な取消しではない
詳しくは、国税庁「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱い」で示されています。
今回のように「建替え後に戻す」場合は、贈与から相当期間が経過し、土地が建築に使用され、場合によっては抵当権も設定されています。そのため、当初の贈与がなかったものとする例外的な取扱いは受けにくいと考えられます。
戻すときにも登録免許税がかかりますか?
子どもから親へ贈与による所有権移転登記をする場合、登録免許税の本則税率は、原則として固定資産税評価額の2%です。
例えば固定資産税評価額が1,000万円なら、登録免許税だけで原則20万円となります。これは司法書士報酬や不動産取得税とは別です。国税庁「登録免許税の税額表」
親から子どもへ移した際にも同様の費用がかかっているため、土地を往復させると登記費用も二重になります。
建替え後の建物名義はどうなりますか?
土地を親へ戻しても、新築した建物の名義が自動的に親へ変わるわけではありません。
土地と建物は別の不動産です。
| 建築費の負担者 | 建物の名義 | 注意点 |
|---|---|---|
| 子どもが全額負担 | 子ども | 土地は親、建物は子という状態になる |
| 親が全額負担 | 親 | 土地を子名義にしていた期間の使用関係を整理 |
| 親子で負担 | 負担割合に応じた共有 | 負担割合と持分が違うと贈与税の可能性 |
| 子名義だが親が費用負担 | 子どもへの贈与と判断される可能性 | 建築前に名義を決める必要がある |
建物の登記名義と建築費の負担割合が一致していないと、親子間の贈与と判断される可能性があります。
住宅ローンが残っている場合は戻せますか?
住宅ローンの抵当権が設定されている土地は、金融機関へ無断で名義変更してはいけません。
登記手続自体が可能な場合でも、ローン契約の違反になり、一括返済を求められるおそれがあります。
必ず次の点を金融機関へ確認します。
- 親への所有権移転を認めるか
- 債務者を変更する必要があるか
- 親が担保提供者になるのか
- 親の年齢・収入で債務引受けが可能か
- 住宅ローン控除に影響しないか
- 団体信用生命保険をどう扱うか
- 借換えが必要か
「建替えが終わったら親へ戻す」という計画を金融機関へ知らせずに融資を受けることは避けてください。
住宅取得等資金の非課税制度は使えますか?
住宅取得等資金の贈与税非課税制度は、親などの直系尊属から子どもへ、住宅の取得・新築などに使う「金銭」を贈与する制度です。
親が土地そのものを子どもへ贈与する場合や、子どもから親へ土地を戻す場合に、そのまま適用できる制度ではありません。
また、相続時精算課税を利用して親から子どもへ土地を贈与していても、後に親へ戻せば自動的に精算されるわけではありません。最初の贈与と返還時の取扱いをそれぞれ確認する必要があります。
名義を戻す前に確認する書類
- 土地・建物の登記事項証明書
- 最初の贈与契約書
- 贈与税申告書
- 相続時精算課税選択届出書
- 固定資産税評価証明書
- 建築工事請負契約書
- 建築費の振込記録
- 住宅ローン契約書
- 抵当権設定契約書
- 建物の所有権保存登記
- 親子間の土地使用契約書
書類を確認せずに新しい贈与契約書を作ると、利用済みの税制や住宅ローンに影響する可能性があります。
建替え前なら土地を贈与しない方法を検討する
まだ親から子どもへ土地を移していない段階なら、次の方法が一般的に負担を抑えやすくなります。
親名義の土地に子どもが家を建てる
親子間で土地使用貸借契約書を作成し、親の土地に子ども名義の家を建てる方法です。
土地を贈与しないため、土地そのものに対する贈与税や所有権移転登記は発生しません。ただし、住宅ローンでは親による担保提供を求められることがあります。
親名義のまま親が建て替える
親が資金を負担し、親名義で新居を建てる方法です。将来は相続で子どもへ引き継ぎます。
親の年齢や収入によって住宅ローンが難しい場合は、親子リレーローンなどを検討します。
土地を家族信託に入れる
親を受益者、子どもを受託者とする家族信託を利用し、経済的な利益を親に残したまま、子どもが建替え手続きを行えるようにする方法です。
ただし、住宅ローンに対応できる金融機関が限られるため、先に融資確認が必要です。
宮崎県での安全な相談手順
- 司法書士に土地・建物の登記を確認してもらう
- 税理士に往復贈与と売買の税額を比較してもらう
- 住宅ローンがある場合は金融機関へ相談する
- 土地と新居の評価額を確認する
- 親へ戻す目的を整理する
- 贈与・売買・合意解除の中から選択する
- 契約書作成後に所有権移転登記を行う
- 翌年の贈与税・所得税申告を確認する
まとめ
土地を子どもへ贈与した後、建替え後に親名義へ戻すことは可能です。しかし、単なる名義の復元ではなく、原則として新しい贈与または売買になります。
特に注意するのは次の4点です。
- 最初の親から子への贈与税は、戻しても原則として消えない
- 子から親への移転にも贈与税がかかる可能性がある
- 所有権移転登記と不動産取得税が往復で発生する
- 土地を戻しても、新築建物の名義は自動的に変わらない
まだ最初の贈与をしていない場合は、土地を親名義のまま使用貸借で子どもが建てる方法などを先に検討する方が現実的です。








