結論として、シニア住宅では、LDK・寝室・廊下などの主要空間はフローリングを基本にする方が、将来の車いす・歩行器・ベッド生活に対応しやすくなります。
畳でくつろぎたい場合は、独立した和室を必ず設けるのではなく、床と同じ高さの畳スペースを3~4.5畳程度設ける方法がおすすめです。
畳とフローリングの比較
| 比較項目 | フローリング | 畳 |
|---|---|---|
| 歩行器・車いす | 動かしやすい | 車輪が沈み、動かしにくい場合がある |
| ベッド・椅子生活 | 相性がよい | ベッド脚の跡が付きやすい |
| 床からの立ち上がり | 床座を避けやすい | 床から立ち上がる負担がある |
| 転倒時の衝撃 | 硬く、衝撃が大きい | 比較的やわらかい |
| 滑りやすさ | 表面仕上げによる | 比較的滑りにくい |
| 掃除 | 掃除機・モップを使いやすい | 目に沿った清掃が必要 |
| 湿気対策 | 比較的管理しやすい | カビ・ダニ対策が必要 |
| 張り替え | 比較的選択肢が多い | 表替え・交換が必要 |
| 布団生活 | 硬く冷たく感じやすい | 相性がよい |
フローリングが向いている人
- ベッドと椅子を中心に生活したい
- 将来、車いすや歩行器を使う可能性がある
- 床から立ち上がるのがつらい
- 掃除や維持管理を楽にしたい
- 室内の段差を極力なくしたい
- ペットを飼っている
- 介護ベッドを設置する可能性がある
特に寝室は、畳に布団を敷くより、フローリングにベッドを置く方が、立ち上がりや介助をしやすくなります。
和室が向いている人
- 現在も畳に座る生活を続けている
- 仏壇を置きたい
- 孫や家族の宿泊場所が必要
- 洗濯物を畳んだり、横になったりする場所が欲しい
- 日本的な空間を残したい
- 床座から問題なく立ち上がれる
和室は身体機能だけでなく、長年の生活習慣や心の落ち着きにも関係します。安全性だけを理由に、好きな畳をすべてなくす必要はありません。
小上がり和室は避けた方がよい?
シニア住宅では、小上がり和室は慎重に判断した方がよいでしょう。
小上がりには腰掛けや収納として使える利点がありますが、次の問題があります。
- 夜間に段差を見落とす
- すり足でつまずく
- 車いすで入れない
- 介助者が支えにくい
- 転落するとけがにつながる
- 将来フラットに戻す工事が必要になる
国の住宅性能評価でも、高齢者の主要な生活動線は、原則として段差のない構造とする考え方が示されています。国土交通省「評価方法基準」
畳を設ける場合は、小上がりにせず、フローリングと同じ高さに納める方が安心です。
おすすめは「フラットな畳コーナー」
LDKの一角に、3~4.5畳程度の畳コーナーを設けると、将来の使い方を変更しやすくなります。
- フローリングとの境に段差を設けない
- 畳縁の盛り上がりを小さくする
- 取り外し可能な薄畳を使用する
- 引き戸で必要なときだけ仕切れるようにする
- 将来フローリングへ変更できる下地にする
- 収納扉が車いす動線へ出ないようにする
- 手すりを追加できる壁下地を設ける
普段はLDKの一部として使い、来客時だけ引き戸で仕切れば、独立した和室を設けるより面積を有効に使えます。
畳を寝室にする場合の注意点
畳の寝室でもベッドは使えますが、次の対策が必要です。
- ベッド脚の下に保護板を敷く
- ベッド下の通気を確保する
- キャスター付きベッドの沈み込みを確認する
- 介助者が立つ部分は硬い床にする
- 車いすからベッドへ移乗できるスペースを確保する
- 畳が傷んだ場合に部分交換できる仕様にする
介護ベッドは重量があり、キャスターで畳を傷めることがあります。将来、介護用寝室にする可能性が高い部屋は、最初からフローリングが適しています。
フローリングは「滑りにくすぎ」にも注意
シニア向けには、光沢が少なく、適度に滑りにくい床材を選びます。ただし、摩擦が強すぎる床は、すり足や歩行器の先が引っ掛かることがあります。
- ワックス不要の低光沢床
- 靴下でも滑りにくい仕上げ
- 車いす対応の耐傷性
- 継ぎ目や見切り材の段差が少ない
- 水拭きしやすい
- 厚いラグを敷かなくても冷たく感じにくい
「無垢材か複合フローリングか」より、表面塗装や仕上げの滑りにくさを実物で確認することが大切です。
宮崎では畳の湿気対策が必要
宮崎は梅雨や台風時期の湿度が高いため、天然イ草の畳は換気・除湿を怠るとカビが発生することがあります。
管理負担を抑えたい場合は、次の製品も候補です。
- 和紙畳
- 樹脂畳
- 防カビ仕様の畳
- 水拭きできる畳
- 部分交換できる置き畳
ただし、置くだけの畳はずれたり、端がめくれたりする可能性があります。床に固定でき、フローリングとの境に段差が生じない製品を選びましょう。
建築費への影響
同じ床面積なら、畳とフローリングの材料差よりも、独立した和室を追加することによる床面積の増加の方が、総額への影響は大きくなります。
例えば独立した6畳和室を設けると、和室本体だけでなく、押入れ、廊下、建具、照明なども必要になります。
建築費を抑えるなら、
- 独立した6畳和室を設けない
- LDK内に3~4.5畳の畳スペースをつくる
- 普段はLDKとして一体利用する
- 必要なときだけ引き戸で仕切る
という方法が効率的です。
シニア住宅におすすめする選択
最もバランスがよいのは、次の構成です。
- LDK・廊下・寝室:フローリング
- 畳が必要ならLDKの一角に3~4.5畳
- 畳とフローリングの高さをそろえる
- 小上がりにしない
- 将来フローリングへ変更できる下地にする
- 布団ではなくベッド生活を基本にする
「和室かフローリングか」の二者択一ではなく、主要動線はフローリング、くつろぎ場所だけ畳にする方法が、シニアには使いやすいでしょう。








